テスターの裏技的使い方

テスターを本来の使い方で使うだけでなく、工夫すれば様々な用途に使えるものです。これらはデジタルテスターでもある程度は可能ですが、アナログテスターの方が応答が速く、針の振れ具合で判定することもあり、このような用途にはアナログテスターの方が使いやすいものです。

テスターをトコトン使いこなすなら、アナログの安いものでかまいません。特別高級品は必要ありません。もちろん、特別に必要な機能を使うのなら、デジタルテスターの高級品を使ってください。周波数や真の実効値や電力の測定などができるものもあります。

抵抗測定の裏技でダイオードやトランジスターの良否を判定する方法

トランジスターやダイオードやLEDの良否判定にアナログテスターを使う方法を紹介します。これを完全にマスターしたら、ジャンクの部品を使うのが楽しくなります。

テスターでダイオードの導通テストをする方法

テスターでダイオードの導通テスト

この図のように ダイオード楽天 (LEDも同じ)の場合は、P形半導体からN形半導体へ電流が流れるので、テスター棒の赤色(マイナスの電圧が出ている)をカソード側に、黒色(プラスの電圧が出ている)をアノード側に接続すれば、アノードからカソードへ電流が流れます。

その逆は電流が流れません。LEDでは適切なレンジを選定するとテスターの電流で測定しているLEDが点灯します。

LEDは順方向の電圧が少なくとも1.7V以上必要なので、テスターの電池の電圧がこれより低い場合はこの測定はできません。最近はLEDの順方向の電圧が3V以上必要なものもありますので注意してください。

テスターでトランジスターの良否を判定したり、簡易的にhfeを測定する方法

NPNトランジスターを模式的に表した図

この図がNPNトランジスターを模式的に表したものです。NPNトランジスターはN型半導体とP型半導体をNPNの順番に接合したものです。

見方を変えると図のように2つのダイオードと見ることもできます。

トランジスター楽天 の接合部は、P形半導体からN形半導体へ電流が流れるので、テスターの抵抗測定機能を使って、とりあえずベースはわかります。

コレクターとエミッターの見分け方は次の様にします。

コレクターとエミッターの見分け方

トランジスターの良否を判定する

NPN型(2SC、2SDタイプ)を例に説明します。テスターは抵抗を測定する約1000倍のレンジにしておきます。写真の様にコレクターと思われる足にテスターの黒色の棒(電圧はプラスが出ている)を当て、エミッターと思われる足に赤色の棒(同マイナス)を当てます。

次に、コレクターと思われる足とベースとの間を指で触ります。テスターの針が普通に指だけに当てた時より大きく振れれば、想定した足がコレクターとエミッターです。PNP型ではテスターの色を逆にします。

これは、トランジスターの増幅作用を見ているのと同じです。つまり、簡易的にエミッター接地の電流増幅率hfeを測定しているのです。

応用として、何個もあるトランジスターの中からhfeの大きい物を探すとか、hfeの揃った物を探すとかにも利用できます。トランジスターが生きているか死んでいるかもわかります。トランジスターを使用する前に私はいつもやっています。知っていて損はないと思います。

これはテスターの電源とテスター内部の抵抗を使って簡単な増幅回路を形成させています。ベースとエミッター間の指は人体を抵抗として使いベース電流を流してやります。

この時のテスターはデジタルでも使えますがアナログテスターの方が使いやすいと思います。

SCRやMOS-FETもテスターでチェックできます

本当はサイリスター(SCR)や電界効果トランジスター(MOS-FET)もテスターでチェックできる物もあるのですが、説明がめんどうなのでここには書きません。自分で考えてみてください。

抵抗測定の裏技で電解コンデンサーの容量抜けと絶縁をチェックする方法

抵抗測定の裏技で電解コンデンサーの容量抜けと絶縁を判定

最近のデジタルマルチメーターにはコンデンサーの容量を測定できるものもありますが、アナログテスターだけでも電解コンデンサーの容量抜けを判定することができます。

この図のようにアナログテスターを抵抗測定の高レンジにして、電解コンデンサーに当ててやります。一瞬針が振れて元に戻ります。指針の振れ具合で容量が推定できます。

テスター棒の赤と黒を入れ替えて何度でも試すことができます。容量のわかっている新品の物と比較すればおよその容量はわかります。

テスターの赤い棒を電解コンデンサーのマイナス端子に、テスターの黒い棒を電解コンデンサーのプラス端子に当てた時の安定した指示値が、このコンデンサーの絶縁抵抗値になります。この値は大きい程コンデンサーとしては良いことになります。

電圧測定の裏技でテスターを検電器として使う方法

電圧測定の裏技でテスターを検電器として使う方法

家庭用の100Vの配線は簡単に書くとこの図のようになっています。100Vの電源はHot側とCold側の2本で来ていて、Hot側に触ると感電します。このHot側かCold側かを検出測定するのが検電器です。検電器を手に持って電線に触れるだけで測定できます。

最近のテスターの電圧計は内部抵抗が大きくて、交流電圧測定のレンジで10kΩ/V程度のものもあります。1000Vレンジだと、内部抵抗が10MΩにもなります。100Vレンジでも内部抵抗が1MΩです。

これなら交流電圧計の100V~1000Vレンジで低圧の 検電器楽天 として使えます。つまり、例えばテスター棒の黒の金属部分を手で持って、赤い棒を100Vのコンセントに差し込めば、もし電圧側(Hot側)ならテスターの針が振れます。接地側(Cold側)では振れません。200Vなら両方共、針が振れます。

但しこれを行なうのは自己責任でお願いします。安全の為に対地電圧150V以上の電圧では行わないようにしましょう。また、絶縁の良い靴やスリッパを履いているとか、乾燥した絨毯や布団の上に居る場合に限るとかの注意も怠ってはいけません。

電線がホットかコールドかを知るのは電気工事の時に必要となります。電線の色でホット側(黒色)とコールド側(白色)は色分けされていますが、無資格者が工事をしたのか、その通りになっていない場合がたまにあります。また相当古い配線ではそもそも電線の色分けがされていません。

テスターで交流分のみを測定する方法

テスターで交流分のみを測定する

テスターを交流電圧計にすると、商用周波数(50/60Hz)の正弦波は測定できますが、直流に重畳した交流分は測定できません。

テスターによっては、この図のようにコンデンサーを内蔵したものもあります。OUTPUTと書いてある端子に赤いテスター棒を接続すれば、直列に0.047μF程度のコンデンサーが挿入されるようになっています。

テスター内にコンデンサーが内蔵されていない場合は、外付けで約0.047μF位の容量で耐圧1000V程度のコンデンサーを使ってください。これは、修理の時に直流電圧が掛かっている箇所で信号が来ているかどうかを見るのに役立ちます。

テスターで交流の正と負の電圧を別々に測定する方法

テスターで交流の正と負の電圧を別々に測定する

普通の交流波形は正の部分の値と負の部分の値が同じですが、インバーターエアコンの室内機と室外機を接続している制御線には、正と負のパルスが別々の信号になっている場合があります。例えば、室内機から室外機への信号は、正のパルス信号を使い、室外機から室内機への信号は負のパルス信号を使っていることがあります。

この図のように、テスターの設定を交流電圧が測定できるようにしてやると、テスター棒の赤色を接続した方の電圧が正となった時だけの電圧を測定できます。

これが測定できれば、室内機側の故障か、室外機側の故障かを切り分けることができる場合があります。両波整流のテスターの場合は、直流電圧計にして、外部に直列にダイオードを接続します。

前編、テスターの基本的な使い方