高調波と高周波ノイズの発生と対策

近年、インバーターなどの機器による高調波や高周波のノイズによって電力系統の電圧波形に歪が生じることがあります。このノイズは様々な機器に混入し問題を起こします。対策として進相コンデンサに直列リアクトルを取り付けたり、ローパスフィルターを使うことがあります。

高調波とは

商用電源の周波数は日本では50または60Hzです。この基本波に対して、整数倍の周波数を高調波と言っています。きれいな正弦波に対して歪んだ波形は、これをフーリエ級数に展開すると基本波形とその高調波に分解することができます。

つまり、電圧波形が歪んでいると、その電圧成分は、基本波と高調波との合成によって成り立っていると見ることができます。

高調波の発生原因

高調波が発生するのは、最近のインバーター機器やサイリスターなどを使用した半導体機器などで大電力のものが増えたことが主な原因です。

正弦波の波形の途中でON/OFFを繰り返す、つまり、位相制御などで電流をON/OFFすると、電源インピーダンスは有限の値なので、ON/OFFに従った電源電圧の変動が起こります。これは大電力になる程、その電流が大きくなり電源電圧に及ぼす影響が大きく、歪も大きくなります。

高調波と高周波のノイズ(雑音)

電子機器などに影響を及ぼすノイズ(雑音)には、電源周波数の整数倍の高調波と、インバーター機器などから発生する電源周波数に関係の無い高周波(約10kHz~数MHz)のノイズも問題になります。

周波数が高いノイズになる程、電源の電線間に乗って流入するよりも様々な電線を電波のように伝わって来るようになります。これをコモンモードノイズと呼んでいます。

また、大電力で場所が近い場合は、直接電波となって様々な機器に影響を与えることがありますので注意が必要です。

高調波や高周波ノイズの問題と対策

ノイズフィルターの画像

高調波や高周波ノイズが機器に混入すると、その機器の正常な動作に影響を与えて、異常動作をしたり、本来の正常な動作ができずに問題を起こすことがあります。

電源から流入するこれらのノイズ成分を取り除くには、機器側の電源にローパスフィルターを挿入するのがその対策となります。ローパスフィルターにはノーマルモードとコモンモードのフィルターがあります。

この画像は元々感電について説明している図ですが、ノイズフィルターの回路図の例です。このような回路を電源に入れると電源から侵入したり、電源に流出する電気的なノイズを減らすことができます。

ノーマルモードノイズとは、ノイズ源が電線に対して直列になっていて、電線の線間に乗ったノイズの事です。コモンモードノイズとは、電線とアース間に乗ったノイズの事です。

高調波の対策としては、弱電ではコンデンサやコイルを使った ローパスフィルター楽天 やノイズフィルター が考えられます。電力の大きい強電では、既に設置されている力率改善の為の進相コンデンサもフィルターの役目をします。

一般的にコンデンサは、周波数が高いほどそのインピーダンスが小さくなり、フィルターの効果が大きいのですが、大電力で高い周波数では大きな電流が流れて過熱し焼損することがありますので注意してください。

高調波対策としての直列リアクトルの役目

高調波の対策には進相コンデンサに直列にリアクトルを設置して電源波形を改善することが行なわれています。

直列リアクトルのリアクタンスは、進相コンデンサ容量の6%が一般的ですが、最近は高調波耐量の大きいリアクトルで進相コンデンサの容量の13%のものも使われています。

大電力の高調波の影響で、進相コンデンサの直列リアクトルが異常振動したり発熱したりして焼損する危険性がありますので、それらの選定には注意が必要です。

また、直列リアクトルは電源投入時に進相コンデンサへの突入電流の抑制にも役立っています。