接地抵抗計による接地抵抗の測定
接地抵抗計による接地抵抗の測定方法、アース地点から半径5~10m以上離れればそのアースによる電流の影響が少ない事を利用しています。接地抵抗の測定は直流ではなく何故交流で測定するのでしょうか。それは直流では電気分解による分極作用と、異種類のアース極による電池の生成の影響がある為です。
接地抵抗計の動作原理
この図が接地抵抗の測定方法を示したもので、E が測定しようとするアース電極です。
このアース電極の場所から5~10m以上離れた地点に補助接地棒Pを、また、同一延長線上で5~10m以上更に離れた点に補助接地棒Cを打ち込みます。
EとCの間に交流電圧 V をかけて電流 I を流してやります。Re,Rp,Rcはそれぞれの接地極の接地抵抗です。
接地極EとPの間の電圧 Ve をAC電圧計Mで測定します。この時Rpには電圧を測定するだけで電流が流れないので、この抵抗値は無視できます。
Ve = I*Re なので Re = Ve/I となります。
実際はこんな計算をしなくても、 接地抵抗計楽天 の数値を読み取るだけで測定できるようになっています。
この図の電圧分布でP点が大地の電位を表していて、この場所を少し位移動させても電圧の変化しない点になっていないと正確な測定はできません。
何故ならRe,Rcの接地抵抗の影響範囲は接地点から約5~10m以上だからです。土壌の抵抗率が大きい時は補助接地棒をアース点より更に大きく離す事が重要となります。
この距離は10m以上でないといけないと思い込んでいる人もあるようですが、地下水位が高く、湿気の多い土壌の場合、5m程度でも問題ありません。
市販の接地抵抗計による接地抵抗の測定
この写真は三和のPDR-100アナログ式のトランジスタ式自動接地抵抗計です。接地抵抗測定方式は定電流方式の3電極法または2電極法です。
3電極法は上記の理論による測定方法です。この写真の一番左のE端子には接地抵抗を測定したいアース電極に接続します。
その右に補助接地極を接続する為のP端子とC端子がありますので、それぞれの電極に接続します。
2電極法は接地抵抗が既知のアース端子がある場合の測定方法です。この場合は、CとPの端子をショートしてE端子間との抵抗を測定して、既知の接地抵抗値を差し引きします。
この場合は、既知のアース端子と測定しようとするアース端子とは十分な距離(例えば10m以上とか)が離れている必要があります。
これは、古い接地抵抗計ですが、理論に忠実に測定しますので正確な測定が可能で、今でも現役で使っています。0~1kΩの範囲の測定が可能です。
接地抵抗計は都道府県に電気工事業者の登録をする場合に必要な計器のひとつです。他に回路計(テスター)や絶縁抵抗計も必要です。
接地抵抗測定に交流を使う理由
接地抵抗の測定には、直流ではなく何故交流で測定するのでしょうか。疑問に思われた方はありませんか。その理由は、直流で測定すると、電気分解による分極作用と、異種類のアース極による電池の生成の影響がある為です。
すなわち、もし直流で測定すると、水や塩水を電気分解するのと同じような現象が土に含まれている水分や塩分などの不純物で起こります。
つまり、電極で水素や酸素や塩素の泡が発生(分極)して、最初多くの電流が流れていても、次第に電流が流れにくくなります。これではいつ電流を測定して良いのかわかりません。時間の経過と共に抵抗値が変化するということです。
またアース極と補助極に銅板同志を使えば問題は無いのでしょうが、実際のアースは鉄を使ったり炭素棒を使ったり亜鉛メッキの板だったりもします。電極が異種の材料ならそれだけで電池を生成してしまいます。
つまり直流電圧を加えていないのに、その生成された電池だけで電流が流れてしまいます。ということは、測定で加えた直流電圧の向きによって電流値が異なるという事です。これでは接地抵抗の測定に誤差を与えてしまいます。
交流なら上記のような影響は無く正確な測定が可能となります。