単相2線式と単相3線式の特徴(違い)

電力会社からの家庭用電源で、柱上トランスから各家庭までの配線方式には、古くからある2本線(単相2線式)のものから、3本線(単相3線式)のものになってきています。単相3線式では200Vの電気も使うことができます。200Vでは100Vに比べて同じ消費電力なら半分の電流となるので大電力が取扱えます。

昔の古い家屋では単相2線式があたりまえでしたが、最近の家庭では電気の消費量が増えて、 単相2線式楽天 では対応できなくなってきました。そこで登場したのが単相3線式の配電方式です。

単相3線式は200Vが使えますが、中性線が接地されていますので、電線の対地電圧は100Vのままとなります。電圧が高くて特に危険という訳ではありません。

また単相3線式では、IHヒーター(電磁調理器)や電気温水器のようなパワーの大きい200Vの電気製品も使うことができます。200Vでは100Vの機器に比べて同じ消費電力の機器を使用しても半分の電流しか流れませんから、同じ太さの配線でも大電力が取り扱えるのです。

そこで単相2線式と単相3線式とでは、電力伝送に於いてどの程度の差があるのか、理論的に比較計算してみました。

単相2線式と単相3線式の回路 

単相2線式と単相3線式の回路図この上の図が単相2線式で、下の図が単相3線式の回路図です。単相2線式は単相3線式の一部の100Vだけを使っているのがわかると思います。

理論的に比較する為に、単相3線式では電流バランスがとれた理想的な状態で計算することにします。

簡単な例として、100Vの負荷抵抗はどちらも1kΩの抵抗を2個使っているものとします。これを単相2線式では並列に接続します。単相3線式では図のようにそれぞれの100Vに接続します。また電線の太さは全て同じものを使用して、各電線の抵抗値(R1,R2,R3,R4,R5)は1Ωとします。

そうすると単相2線式では負荷抵抗が500Ωとなり、0.2Aの電流が流れます。消費電力は合計で20Wとなります。(電線の消費電力は小さいのでここでは無視します)

単相3線式ではそれぞれの抵抗には0.1Aの電流が流れます。消費電力はそれぞれの抵抗で10Wとなり、合計で20Wとなります。

電線での電圧降下の比較

単相2線式の電線での電圧降下は、0.2x1=0.2Vの2倍となり、合計0.4Vとなります。つまり負荷にかかる電圧は 100-0.4=99.6V になります。

単相3線式の電線での電圧降下を考えると、R4には位相の180度ずれた0.1Aの電流が両方向から流れることになるので相殺されて電流は流れません。

従って100V負荷の電圧降下は、0.1x1=0.1V となります。つまり負荷にかかる電圧は、100-0.1=99.9V となります。

電線での電圧降下分を比較すると、単相3線式では単相2線式に比べて1/4になることがわかります。つまり、同じ電線、同じ電力なら、単相3線式は単相2線式に比べて電線での電圧降下が1/4になるということです。

単相3線式で200V回路を考えると、R4には電流が流れず、R3とR5との電圧降下を加えると100Vの時の2倍になります。この時の電圧は200Vになりますので、電圧降下率で考えるとやはり単相3線式では単相2線式に比べて1/4になります。

ここでは単相3線式と単相2線式の方式の比較をしている訳で、電圧降下はこのように100V同士で比較するべきです。

電線での消費電力の比較

単相2線式の電線での消費電力は、0.2x0.2=0.04Wの2倍となり、合計0.08Wとなります。

単相3線式の電線での消費電力は、0.1x0.1=0.01Wの2倍となり、合計0.02Wとなります。

これらの事から、電線での消費電力を比較すると、単相3線式では単相2線式に比べて1/4になることがわかります。

つまり同じ電線、同じ電力なら、単相3線式は単相2線式に比べて電線での発熱が1/4になるということです。

これらはあくまでも理想の状態であり、単相3線式でも負荷がバランスしていないとこのようにはなりません。

単相3線式配線の注意点

単相3線式配線は100V回路が2系統あり、効率を考えたらそれぞれの電流バランスを考えて負荷を配置する必要があります。

接地されている中性線が断線すると、各負荷に100Vより高い電圧が掛かる場合があります。中性線にはヒューズを入れない事、中性線の接続の緩みが無い事に特に気をつける必要があります。

各電気機器に過電圧が掛かるのを防止するには中性線欠相保護機能付の漏電ブレーカーを取り付けるのが効果的です。最近市販されている幹線用の漏電ブレーカーには、たいてい中性線欠相保護機能が付いています。