炉心溶融、メルトダウンとは(チャイナシンドローム)

2011年3月11日の「東日本大震災」の津波で、福島第一原子力発電所で重大な原発事故が起こりました。放射性物質が漏れて拡散することとなりました。核燃料棒が溶けて破損したので、炉心溶融と言えると思います。

炉心溶融、メルトダウンとは

放射線を示すステッカーの画像

炉心溶融(炉心融解)、メルトダウンとは、原子力発電所の炉心の核燃料が何らかの理由で過熱した場合、核燃料そのものや炉心が融解して壊れることです。もし、原子炉の圧力容器や原子炉格納容器が破損すると、既に燃料棒が破損しているので、放射性物質が大量に周囲に拡散することになります。

福島第一原子力発電所の事故の場合は、冷却システムが壊れて、燃料棒を冷却する水が蒸発して燃料棒が水中から露出したので、燃料棒が過熱溶融する事態となりました。

原子力発電所の簡単な仕組み

原子力発電所楽天 では、ウラン235やプルトニウム239の核燃料を連続的に臨界状態にして、核分裂反応を制御可能にしています。核分裂反応を制御するには、制御棒と呼ばれるものを核燃料の中に出し入れすることで行なっています。

この核分裂の時、大量に発生する熱エネルギーで高圧の水蒸気を作り、その蒸気の圧力でタービンを回し、発電機を回転させて発電しています。

タービンで使用した高温の蒸気は水に戻して再利用しています。これは一次冷却水にはどうしても放射性物質が含まれる為です。このように、高温の水蒸気を冷やしたり、使用済みの核燃料を冷やす為には大量の水が必要です。

原子力発電所が海の近くにあるのはこの不要となった熱を捨てるのに便利なからです。外国では同じ理由から川の近くにあるものもあります。

原子炉の停止方法とその後の燃料棒の冷却

地震等の緊急時や原子炉の点検時のように原子炉を停止する場合は、核燃料棒の間に制御棒という放射線を遮蔽する物を挿入します。原子炉が停止しても燃料棒はすぐには冷たくなりません。しばらくの間は冷却水を循環させて炉心を冷却し続けるようになっています。

原子炉には非常用炉心冷却装置(Emergency Core Cooling System ECCS)があります。これは冷却材が無くなったり、圧力が低下したのを検知すると自動的に働きます。ECCSは、炉心の冷却と原子炉圧力容器内の減圧との機能を持っています。

使用済み核燃料を冷却する期間は3年程度だとテレビで放送していました。ずいぶん長い期間がかかるんですね。この間、ずっと冷却システムを動かし続けなければなりません。

最悪の炉心溶融

原子炉が停止しても、燃料棒の冷却処理がうまくいかなければ、核燃料の発熱によって、更に燃料棒の温度が上昇します。そうすると、燃料棒そのものが溶融して破損します。燃料棒はジルコニウム合金等で作られた燃料被覆管と呼ばれる約4mの長さの細い管になっています。

燃料棒のウランが融ける温度は約2,800度Cですが、実際はウランがジリコニウムと反応して、酸化するので、燃料棒は約2,300度Cで溶融するようです。燃料棒が溶融破損する温度になると、福島第一原子力発電所の事故のように、水素が発生して、酸素があれば水素爆発が起こることとなります。

最悪の場合、原子炉圧力容器(厚さ15cmの鉄製、融点約1,500度C)や原子炉格納容器、原子炉建屋等が溶融や爆発や火災で破壊されることがあります。そうすると、外部に放射性物質を大量に放出してしまいます。

燃料棒が溶けて冷却水中に落ちると冷却水が激しく蒸発して水蒸気爆発が起こることもあります。

チャイナシンドロームとは

「チャイナシンドローム」の映画がありますが、アメリカで炉心溶融が起きて原子炉を溶かし、地殻までも溶かしていって、地球の反対側の中国まで溶かすというジョークです。こんなことがあるはずがありません。この為、炉心溶融のことを「チャイナシンドローム」と言う場合があります。