科学とその応用について
私は科学は応用する為にあると思っています。科学を学ぶのに机の上と頭の中だけでやると、理解しにくいのがわかると思います。実験や実際のものに結びつけて考えると簡単に理解できることがあります。科学と実際の応用について私が常々考えていた事を述べています。
科学(数学、物理、化学、生物、地学等)の学習について
実際のものに結びつけて考える
例えば、井戸のポンプや水道のことについて考えてみます。ほぼ全ての人が中学校の理科の時間に大気圧や水の 圧力楽天 について学んでいるはずです。では次の問題ができますか。
- ここに井戸があってこの水をポンプで吸い上げるとします。地上から井戸の水面までの深さが何メートルまでなら吸い上げることができますか。
- ここに4階建ての建物があって水道で水が供給されています。地上からの高さが約10mあります。地上で計った水道の水圧はいくら以上必要でしょうか。
この問題は中学を卒業した人なら誰でもできるはずです。もうずいぶん前のことなので忘れましたと言わないでください。
年配の人は、大気圧は1,013ミリバール(約1kg/cm2)の圧力がありますと習ったはずです。今は約100kPa(キロパスカル)または、1,013hPa(ヘクトパスカル)と習っているのかな。これをそのまま覚えたのなら、忘れるのも当然かもしれません。
これを大気圧は水柱約10mの圧力と同じというように覚えていたらたぶん忘れないと思います。つまり1kgの水を底面積1cm2の水柱に換算すると約10mになります。
ここまでくれば前記の問題は解けますね。つまり1の問題の答えは理論的には約10mです。2の問題は理論上は大気圧プラス1気圧です。
ここに出てきた問題も一緒に覚えるというか、一旦解ってしまえばもう一生忘れることはありませんね。このように何事も実際の生活に関連付けて覚えれば科学なんて簡単で誰でも好きになるはずです。そして日常生活で活用することができます。
ところで、普通の水道の水は約300kPa~700kPaの水圧で供給されています。さて何メートルの高さまで水を出すことができるでしょうか。これも簡単ですね。30~70mですね。この程度のことは常識として知っておきましょう。
公式を覚えるより、直感が大切
物理ではよく公式が出てきます。物理の苦手な人は公式を一生懸命に覚えようとします。私は公式はできるだけ覚えないようにしています。覚えた公式はしばらくすると忘れてしまいます。
それよりも直感でどういうことかを体に叩き込むようにしています。電気のことでもまず電気とはどういうものか、どういう性質があるかを常に考えることにしています。このような回路ではどのような動作をするだろうかとまず考えます。
公式は直感でどのようになるかがわかってから、正確な値を計算する為に使用するものだと思います。これは忘れても本を見れば書いてあります。覚える必要はないと思います。よく使う公式は覚えるというより自然にわかってきます。もし覚えるなら基本的な公式のみを覚えたらよいと思います。
私は学校でアナログ電子回路について教えた経験がありますが、学生から「その公式はどのようになりますか」と聞かれることがあります。「公式を教えても良いけど覚えた公式はすぐ忘れるので、公式は覚えないで、どういうことかが解ればよろしい」と、いつも答えています。
危機管理能力について
科学で学んだことを実際に応用できると、危機管理能力が向上します。例えばカセットコンロを2個並べて上に鉄板を置いて焼肉等をして、ボンベが爆発する事故がよくあります。これが危ないことは中学校で学んでいるはずです。
また放送や新聞で度々同じような事例が報道されて、ほぼ全ての人が危険を知っているはずです。それなのに同じような事故が絶えません。
個々の人に科学を応用する能力が欠如しているとしか言いようがありません。学校での科学の教え方(教育方法)に問題があると私は思います。
軽自動車に軽油を入れる人の問題
セルフのガソリンスタンドが最近増えていますが、軽自動車に軽油を入れて、途中で走行不能になる人が増えているそうです。
どうして間違えたのかというと、「軽自動車には軽油を入れるものだと思った」と言う人がいるとのことです。何も考えない人が増えたとは言え、ここまで考えないで生活しているのかと、私は唖然としました。
車を運転するのなら、自分の車の燃料が何か、エンジンの種類は何か、そのくらいは知っていて当然です。自動車学校でも、免許を取る時に、車の構造を勉強したはずです。この勉強は免許を取る為だけではありません。
車を運転するのに必要な知識だからです。「私は文科系でこのようなことは苦手です」なんて言っていられないと思います。
「水からの伝言」の本について
最近「水からの伝言」という本が売れていてその内容を小学校で教えていたらしい。「水からの伝言」という本は水の結晶の写真集で、江本勝氏の著作です。
水に言葉を話しかけたり、字を書いた紙を容器に貼り付けたりした水を結晶させると結晶の形がその言葉の内容によって影響を受けるということらしい。このような非科学的な事を引用して小学校での道徳教育に使われるなど社会的影響が大きく問題となっています。
つまり結晶を作る時に「ありがとう」や「平和」などの良い意味の言葉をかけると美しい雪花状の結晶ができて、「ばかやろう」や「戦争」などの悪い言葉をかけると汚い結晶ができるということらしい。
こんなことがあるはずのない事は明白で、この理由を述べるまでもないことです。これが解らないのなら、あなたは科学を自分で噛み砕いて学習してこなかったのでしょう。
これを小学校の先生が子供に話したというのですから驚きです。つまり先生もこれを信じているということでしょう。このような先生こそ再教育が必要だと思います。