複式簿記によるネット広告収入の仕訳処理方法
複式簿記によるネット広告収入の仕訳は、銀行振込や現金での入手なら特に問題はありません。しかし、楽天アフィリエイトのように、ポイントでの収入の場合は、仕訳をどのようにしたら良いのか迷うものです。このような場合の仕訳について考えてみました。
ネット広告収入が増えてくると、税務申告をしなければなりません。申告しないと脱税になることもあります。税額を自分で計算して自分で納めるのが日本の確定申告のやり方です。申告時期になって慌てないように日頃から記帳をしておくようにしましょう。
インターネット広告収入の所得分類と申告
もし、あなたが事業を行なっていなくて、ネット収益がほとんど無く、一年に一度振り込まれる程度というのなら、一時所得になるでしょう。
一時所得は控除が50万円あります。でも、申告しなければ控除は受けられません。下記のように、この収入が20万円以下なら雑所得とみなして申告の必要はありません。
事業を行なっていないサラリーマンの場合は、継続的にネット収益があるのなら雑所得になります。一年間の雑所得が20万円を超えた場合は申告しなければなりません。もし、一年間の雑所得(経費控除後の金額)が20万円以下の場合は申告そのものが必要ありません。
年金なども無く、全く収入の無い主婦などで、継続的にネット収益がある場合は、ネット広告収入等(経費控除後の金額)が基礎控除の38万円を超えたら、雑所得で申告する必要があります。
この場合は、ご主人の扶養には入れなくなります。(給与所得者ではないので、65万円の給与所得控除はありません。103万円(38+65=103)までの収入ならご主人の扶養に入れるのとちょっと違います。)
何か他に事業を行なっている個人の場合は、ネット広告収入を雑収入に計上します。ネット収入が多くなって事業的規模になってくると、事業収入として売上に計上します。この場合は、白色申告または青色申告をします。青色申告は複式簿記で行なうと、65万円の青色申告特別控除が受けられます。
仕訳とは
青色申告の複式簿記では、まず伝票を起こすという作業を行ないます。その伝票を元に各帳簿へ転記していきます。これをパソコンの 会計ソフト楽天 では一度どれかの帳簿に記載すれば全部の帳簿に転記してくれます。
仕訳とは、取引を「借方(左)」と「貸方(右)」に、資産や負債や資本の増減として、収益や費用も記帳していくことです。資産や負債や資本の増減を伴わない仕訳は存在しません。「借方(左)」とか「貸方(右)」とかと言っても、別に貸し借りをしているのではありません。
仕訳では、一般的に資産や費用は「借方(左)」に、負債や資本や収益を「貸方(右)」に記録します。その場合、その勘定科目の金額は増加します。左右を逆に仕訳した場合は、その勘定科目の金額は減少します。
銀行に振り込みされる場合の仕訳(グーグルアドセンスなど)
例えばグーグルアドセンスで、前月の収益が今月末頃に銀行に50,000円振込みされたとします。これは事業としての収入の場合は売上高になります。事業外の収入の場合は、雑収入になります。
振込日の仕訳 (借方)普通預金 50,000 (貸方)売上高 50,000
となります。借方の銀行口座の預金が増え、貸方の損益の収入が増えたということです。これは特に難しいことはありません。
ポイント受取り収入の仕訳(問題の多い方法)
楽天アフィリエイトのように、銀行振込ではなくて、楽天のポイントで支払われる場合は、ちょっと仕訳に工夫が必要です。楽天ポイントには、アフィリエイトで獲得したポイントや商品を購入して獲得するポイントなどがあります。これらは区別することなく、楽天で管理されています。
アフィリエイトで獲得したポイントは、収入ですから確定申告の必要があります。しかし、商品を購入して獲得するポイントなどは、商品を購入する時の値引きに相当するものです。これは、収入として申告する必要がありません。
楽天では、アフィリエイトで獲得したポイントと商品を購入して獲得したポイントなどとを、区別することなく管理されていますので、次のように仕訳すると問題があります。確定した楽天ポイント10,000ポイント( 10,000円に相当)がその月の10日にもらえたとします。
ポイント獲得日の仕訳 (借方)預け金 10,000 (貸方)売上高 10,000
「預け金」は「楽天ポイント」という科目にしても良いでしょう。科目コードは「その他預金」の付近にしてください。「売上高」は「楽天収入」などにしてもかまいません。
このような仕訳にするのが本来なのでしょうが、このように「預け金」「楽天ポイント」を使うと、収入にするものと収入にしないものとが混ざってしまいます。楽天では別々に管理してくれないので、自分で管理することになります。
また、ポイントで商品を購入する場合も、どちらのポイントを使ったのかが明確ではありません。このような場合は、会計で管理するのは不可能に近いことです。
それならば、全てのポイントを収入にしてしまうのも一つの方法です。しかし、この方法もポイントの管理が非常に面倒になります。何故なら、楽天ツールバーの検索で獲得したポイントがあったりして、楽天ポイントは毎日のように増減しているので、これを逐一仕訳に記録するのは、とても大変なことなのです。
しかし、収入にする必要のないものまで収入にすると、利益が増えてしまいます。無理に難しいことをして、無駄な税金を払う必要はないでしょう。
ポイント受取り収入の仕訳(簡単な方法)
そこで、私は、楽天アフィリエイトの収入の仕訳をやりやすくて、解りやすいように考えました。それは、借り方科目に「事業主貸」を使うことです。また、収入として楽天アフィリエイトで獲得したポイントだけを入力します。
例として、確定した楽天アフィリエイトの収入10,000ポイントがその月の10日にもらえたとします。
ポイント獲得日の仕訳 (借方)事業主貸 10,000 (貸方)売上高 10,000
この仕訳では、資産の「事業主貸」が増えて、売上が収入として計上されるので、利益計算上何の問題もありません。「売上高」は「楽天収入」などにしてもかまいません。この仕訳は1年間に12回発生するだけです。
「事業主貸」や「事業主借」は本来事業主との金銭の貸借に使うもので、この貸借は貸し借りを精算する必要がないのです。つまり、年度末には「事業主貸」と「事業主借」は集計されて、次の年度の元入金として精算されるものなのです。
ポイントで商品を購入した場合の仕訳方法
楽天ポイントで商品を購入した場合、その商品が事業に全く関係の無い、個人的な物の場合は何も仕訳をする必要はありません。つまり、上記のように、ポイントを受け取った時点で、個人の資産になっていますので、個人のポケットマネーで個人用の商品を買うのと全く同じだからです。
次に、楽天ポイントで、全額事業に関係した商品を購入した場合は次のように仕訳します。5,000ポイントを使って5,000円の商品(消耗品)を購入したとします。
商品購入日の仕訳 (借方)消耗品 5,000 (貸方)事業主借 5,000
つまり、事業主から借りたお金(この場合はポイント)で、消耗品を購入したことになります。この仕訳の場合は全額経費になります。全額経費にしない場合は、支払った金額の何パーセントかの金額を計上するか、年度末にまとめて個人負担分を按分計算して個人に振替処理します。
この方法は、仕訳処理がとても簡単で解りやすいと思います。つまり、楽天の購入記録を一年分印刷して、その中から経費に相当するものを抜き出して計上するだけです。注意しなければならないのは、楽天で購入した商品と金額はわかりますが、購入数量と送料は記録されていませんので、それも計上するのなら納品書や請求書を保存しておく必要があります。
注意事項
上記の仕訳は私が考えたもので、会計処理の原則から外れているかも知れません。しかし、損益の計算が間違っていることはありません。税務申告でも問題は無いと思います。税務調査があっても税務署員にちゃんと説明すれば、わかってもらえるはずです。
広告収入の消費税の扱いについて
AdSense の契約上収益は Google Asia Pacific Pte. Ltd. から、つまり海外から支払われています。従って Google AdSense は消費税の課税の対象外(不課税)となっています。
この取引について「国外取引」か「国内取引」かの判断は最終的には税務署か税理士に相談するのが良いでしょう。