ソーラー発電の実験と製作

ソーラー発電の実験と製作の記事です。住宅用のソーラー発電パネルを使って、12Vバッテリーに充電と放電をする為の制御回路を作ってみました。回路は全てアナログ方式です。

最近、住宅用のソーラー発電が新築住宅を中心に普及してきていますが、これは昼間に発電した余剰電力を電力会社に買い取ってもらう方式と、蓄電設備を備えたものも普及して来ているようです。これらの方式はかなり大掛かりで費用も手間もかかります。

ソーラー発電装置の製作の動機

ソーラーパネルの写真

私は費用をあまり掛けないで、最大の効果を出す使い方はないものかと常々考えておりました。 ソーラーパネル楽天 の一番良い使い方は、昼間の発電したものをすぐ使う方法です。

床下換気扇を回すのにソーラーパネルのエネルギーを使うのは大変理に叶った使い方だと思います。しかし元々換気扇の電力が小さいのであまり効果は期待出来ません。

三菱電機製の最大出力126W、19.2V、6.56Aのソーラーパネル(発電素子数40個直列)を入手したので、これを使って実験することにしました。

予備実験の結果、ソーラーパネルの出力を直接24V用のインバーターに入れてみましたが、負荷を繋ぐと電圧が下がってしまって、全く使い物にならないことがわかりました。その為、12Vの自動車用のバッテリーに充電しながら、インバーターで100Vに変換する方式にしました。(2002年6月)

12Vバッテリー充放電回路の製作方法

製作した回路は大きく分けて、12Vバッテリーを充電を制御する回路と放電を制御する回路から構成されています。バッテリーに貯めた電気は市販のインバータでAC100Vに昇圧して使っています。

12Vバッテリーを充電する回路

12Vの自動車用のバッテリーを充電する回路図

左の図は12Vの自動車用のバッテリーを充電する回路図です。

バッテリーの過充電を防止する為、定電圧方式を採用しました。これはソーラーパネルの電圧が高い事、定電圧方式が回路が簡単でメンテナンスが簡単な事等の為です。

回路は秋月電子通商の「実験室用精密級定電圧電源キット」を改造して作りました。改造箇所は黄色い部分です。

秋月のこのキットは回路に重大な間違いがあります。TR4のコレクタとエミッタとが回路図もプリントパターンも逆になっていました。

コレクタとエミッタを反対にしてもベースとコレクタ間がダイオードとして動作します。しかし、トランジスターを使う意味が無くなってしまいます。差動増幅器のバランスがとれないし、温度特性もよくないはずです。723のICの4番と5番の入力は差動増幅器のベースに繋がっています。

このキットは随分前から販売されていました。1992年の11月号のCQ誌にもほぼ同じ回路のキットの記事がありましたが、同様に回路が間違っていました。どうも同じ基板を使っているようです。今まで誰も気が付かなかったとは、どうしたことでしょうか。

インターネットで調べるとこのキットは723のICが発振し易いとの情報があります。私は発振しませんでしたが、よくプリントパターンを見ると723のICの電源(12ピン)とアース(7ピン)間のコンデンサC1,C2がかなり遠くに付いています。私はICの12ピンの近くにC2を移動しました。-SENSEと-OUTの配線を長くした人は発振して当然だと思います。ICの電源とアース間のピンの近くにコンデンサを入れるのは設計の基本です。

TR2とTR5はトランジスターを使います。FETでは8Vも電圧降下があり使い物になりません。この回路での電圧降下は、723のIC内部の2個のトランジスターとTR2,TR5の2個のトランジスターで、合計4個のベースエミッタ間の電圧降下による影響とD4のダイオードで少なくとも3~4Vの電圧降下があります。

回路図にはありませんが、R8の10kΩもいりません。それから電流制限回路は最大電流が6~7Aなので必要ありません。電圧降下を少しでも減らす為に削除します。D1のツェナーダイオードはキットには12Vの物が入っていましたので、9Vの物に変えました。
 D4は発電していない時の逆流防止ダイオードです。キットのスタックダイオードを並列にして使いました。

出力電圧の設定はD4のダイオードのアノード側で、14.5V位にします。

12Vバッテリーの放電を制御する回路

12Vバッテリーの放電を制御する回路図

左の図は バッテリー楽天 の放電を制御する回路図です。

動作はバッテリーの電圧が13Vになるとバッテリーの電源を使ってインバーターが動作します。RL1リレーがONします。12Vリレーの接点はインバーターの電源スイッチに直列に接続してインバーターの起動を制御しています。

バッテリーの電圧が11.5Vまで下がると、リレーがOFFし、バッテリーの使用をやめます。この動作には11.5Vと13Vになった事を記憶するものが必要です。

TR2とTR3が双安定マルチバイブレータ(フリップフロップ回路)を構成していてこれが各状態を記憶します。

ZD1とVR1とTR1が11.5Vの検出を、ZD2とVR2とTR3が13Vの検出をしています。C2は電源投入時TR3をOFFからスタートさせる為です。

この回路の動作電流はリレーOFF時約6mA、リレーON時約40mAです。

充放電回路の仕上がり基板の写真

充放電回路の仕上がり基板の写真

上の基板が定電圧でバッテリーに充電する回路です。これは秋月電子の「高精度電源用レギュレータ723及び大電流FET使用 実験室用精密級定電圧安定化電源キット」というのを改造して作りました。FETは電圧降下が大きいので、トランジスターを使いました。写真ではICの発振は未対策です。

下の基板はバッテリーの放電を制御する基板です。実験用の穴あき基板の切れ端で作りました。あまりよく見ないで下さい。アラが見えてしまいます。

インバーターとの組み合わせ写真

市販のインバーターとの組み合わせ写真

12Vのバッテリーに充電する回路とインバーターで放電する回路です。

1番左の装置が定電圧で充電する回路です。放熱板はもう少し大きい方がいいのですが、まずは実験です。放熱板だけの熱抵抗は2[度C/W]です。右横に付いているのが逆流防止用のダイオードの放熱板です。

真中の基板がバッテリーの放電を制御する回路です。13V以上になると放電開始、11.5Vまで下がると放電を停止する装置です。手前の黒いのがリレーです。

1番右の装置が直流の12Vを交流の100Vに変える300Wのインバーターです。これは市販品です。真中の基板で制御します。

放熱器に強制ファンを取り付けました

放熱器にファンを取り付けた写真

やはり、発電量が最大になると、放熱器が触れない程熱くなります。8年程このままで使ってきましたが、放熱器を強制ファンで冷却してみました。

ファンは組み立てパソコン用で不要となった8cm角のDCブラシレスファンです。仕様は12V0.13Aとなっていました。

100Ω2Wのセメント抵抗を直列に入れて、ソーラーパネルの出力に並列に取り付けました。この写真の右下の白い物がそのセメント抵抗です。このファンがセメント抵抗も冷却してくれます。

音もなく静かに回転していますが、放熱器は全く熱くはなりません。夜になって暗くなるとファンは停止します。とても良い感じです。(2010年8月)

ソーラーパネルの設置状況と結果

ソーラーパネルの設置状況の写真

この写真は、ソーラーパネルの設置状況です。店の屋根にイレクターという鉄パイプ入りで表面がプラスチック製のパイプで架台を製作しました。真南に向けて角度は35度にしました。

真昼の直射日光の下では約120Wの発電をしますが、うす曇程度ではその約1/3の40W位です。

12V28AHの自動車用のバッテリーを4個並列にして、これに充電するようにして、約110AHで40Wの蛍光灯を約10時間/日使用しています。バッテリーの使用中止電圧を約11.5Vに変更しています。動作は予定通りで良好です。

このような小さなソーラーパネルでも十分実用になります。色々実験してみてください。

今後の課題

直流のまま、LED照明に使う方法

この実験のようにバッテリーで100V用のインバーターを駆動してAC100Vで使うのではなく、照明に使うのなら、直流の電源をそのままLEDの照明に使ったら変換ロスもなく、電気を光に変える効率も良く効果が大きいと思います。

小規模なグリッド・タイ・インバーターを使って系統連携させる方法

また、最近は、500W程度までの小型のソーラーパネルなら、GTI(グリッド・タイ・インバーター)を使って、系統連携させる製品が出て来ているようです。これは簡単で安価で効率も良く、電気代の節約にもなるようです。

大規模なものは電力会社と契約しなければなりませんが、小規模なものは簡単で問題なく設置できるようです。私もグリッドタイ・インバーターの発電実験をしてみました。