振幅変調波形と簡単な振幅変調理論
中波のラジオ放送は振幅変調を使った放送を行っています。「AMワイヤレスマイクの設計と製作」で製作したものは放送局と同じような電波を出すものです。AMラジオ放送は音声の信号で高周波(540kHz~1600kHz)を振幅変調する事で放送用の電波を発生させています。
振幅変調波形を作る過程
この図は振幅変調波を作る過程を表しています。(C)は搬送波(電波)の時間軸上の波形で、(S)は低周波の単一信号波です。(D)は(S)で(C)を 振幅変調楽天 をした場合のAM変調波形です。これはオシロスコープで観測した波形とほぼ同じです。
ここで、変調の深さを示す変調度mは次のようになります。
m = (P−Q)/(P+Q)
単一周波数で振幅変調した場合の周波数軸上のスペクトル
このAM変調波をスペクトラムアナライザーを使って周波数軸上で見ると、この図のように搬送波電圧をEとして、変調用の信号周波数をfs[Hz]とすると、搬送波の上下fs[Hz]だけ離れたところに、mE/2の電圧の上側波と下側波ができます。
ここで変調度mを1とすると搬送波に比べて側波の大きさは電圧で1/2の−6dBとなります。電力は上下の側波帯の合計で1/2の-3dBとなります。つまり100%変調をすると、変調された電波の電力は1.5倍になります。
音声変調した振幅変調波を周波数軸上で見たスペクトル
実際の音声で変調した場合は、この図のように搬送波周波数の上下に上下側波帯ができます。
中波の放送局のチャンネル間隔(セパレーション)は9kHzですが、放送チャンネルの帯域幅は15kHzとなっています。この為、音声の周波数は、この半分の7.5kHz未満となります。
FM放送に比べて中波のラジオ放送の音質があまり良くないのはこの放送制度上の原因があるからです。
中波のラジオ放送の振幅変調では、この図のように搬送波が常に発射されていますが、この搬送波には何も信号は無く、電力も大きく全く無駄なものです。(受信機側が簡単になるというメリットはあります)
また、上下の側帯波も上下同じものであり、ふたつ送るのは無駄なものです。この無駄なものを取り除いて、上または下側の側帯波だけを送信するのが、SSBと呼ばれる電波です。これはアマチュア無線等に使われていて、とても効率の良い電波形式です。
スペクトラムアナライザーで測定したAMワイヤレスマイクの出力波形
私が設計製作したAMワイヤレスマイクの出力をスペクトラムアナライザーで測定したものがこの波形です。
AMワイヤレスマイクを1.5kHzの正弦波で約25%変調したものです。
この横軸はセンター周波数が700kHzで左端が687.5kHzで右端が712.5kHzです。
700kHzプラスマイナス1.5kHzの1次上下側帯波のレベルは700kHz搬送波のレベルに比べて約-18dBとなっていて、理論通りです。奇数次の上下側帯波にレベル差があるのは、FM変調成分の為です。
700kHzプラスマイナス3kHzの上下2次側帯波のレベルは1次上下側帯波のレベルに比べて約-40dBとなっています。これは、AM変調器の変調の直線性によるものと、残留FM変調成分によるものと思います。でも-40dBなら電圧で1/100、(1%歪みに相当)、電力で1/10,000 なので問題はありません。AM変調の総合の歪み率で1%以下にするのは一般的にとても難しいものです。
製作したAMワイヤレスマイクのブロック図
この図が今回製作したAMワイヤレスマイクのブロック図です。
マイクからの音声信号をTR1、TR2で変調できるだけの大きさの信号に増幅しています。
TR4はエミッタフォロアで低インピーダンスに変換して、TR5の電力増幅回路にコレクタ変調をかけています。大電力の変調器では、変調トランスを使うのが一般的ですが、ここでは小電力ですので簡易的な直列変調回路としたので、変調トランスは使っていません。
TR3は約700kHzの発振回路で搬送波を発生させています。変調された高周波は1~2mのリード線のアンテナに供給して空中に電波として放射します。