エアコンのガスチャージ方法
エアコンガスの補充(ガスチャージ)には高度な技術が必要です。特に新冷媒のR410Aは2種の混合冷媒であり、圧力が高いので色々と注意が必要です。このページはエアコンのガスチャージ方法と注意事項について、長年電気店でエアコンの修理や工事に従事した経験から説明しています。
エアコンの冷媒ガスの量は適正でないといけません。ガスは減るもので、少しぐらい多い方が良いと思っている人があるようです。過去には工事不良などから、エアコンのガスがよく抜ける例がありました。
エアコンの冷媒ガス量が多いと良いことはひとつもありません。電気の消費量が増え、エアコンの能力が低下します。逆にガス量が少ない場合は、電気の消費量は少ないのですが、能力も低くなります。
エアコンガスの種類と性質
家庭用のエアコンで使われているガスの種類は次のようになっています。最近はHFC-R410Aの混合冷媒(新冷媒)の物が主流でHCFC-R22を使った物は、ほとんど販売されていません。
冷媒の種類 | 組成比率 | 沸点 | 圧力 | オゾン破壊係数 | サービスポート |
---|---|---|---|---|---|
R410A(HFC) | R32---50% R125--50% |
-51.7゜C -48.1゜C |
約1.6倍(R22比) | 0 | 5/16インチ |
R22(HCFC) | R22--100% | -40.8゜C | 1.0 | 0.05 | 1/4インチ |
基本的なガスチャージの方法
エアコンのガスの追加補充は基本的には出来ない事になっています。特にインバータエアコンはガスの量が大変シビアなので、追加補充ではちゃんと入ったかどうかの判定が難しいのです。
また新冷媒のエアコンではガス漏れの場合は2種類のガスの混合比が変化していますので、基本的には追加は出来ませんと言われていました。しかし、冷媒を入れる量が少ない場合は追加してかまいません。(本当は冷媒を入れる量が多い場合でも問題ありません)
基本的な ガスチャージ楽天 の方法はガスを全て抜いて(ガスを回収して)ガスの重量を量りながら規定量になるように冷媒を入れてやります。
運転は冷房で行ないます。冬の間は冷房運転させるのが困難な機種もあり、難しい事の一因にもなっています。
実際のガスチャージの手順
ボンベを100g以下の単位まで計量可能な量りの上に乗せてガスの重量を量りながら、この写真のような ゲージマニホールド楽天 の真ん中の黄色いホースをボンベに接続します。
次に低圧側の青い(高圧側の赤でもかまわない)ホースを太い方のパイプのサービスポートに接続します。この前にボンベとマニホールドのバルブを少し開けてホースの中の空気を追い出しておきます。
冷房運転しながらバルブを操作して規定量だけ、液で少しずつガスを入れます。規定量に達したらボンベのバルブを閉めます。(この時、ホース内のガスを残さず入れるには、冷房運転で、細いパイプ側のバルブを閉めてやります)
冬の寒い時期と暖房運転でやる方法
夏の間でも、ガスチャージをすると、ガスボンベが冷えるのに、冬の間は元々寒い上にガスボンベが冷えてきて普通の方法では冷媒ガスがなかなか入って行きません。
その時はボンベをぬるま湯で少しずつ温めてやります。直接火でボンベを温めてはいけません。温度ムラができやすくボンベを痛める原因になります。
暖房運転でやる方法もありますが操作が難しく、エアコンの動作を理解していないと難しいと思います。逆に理解していれば言わなくてもやり方は解るでしょう。
最近の新冷媒ガスは気体で入れないでボンベを逆さまにして必ず液体で入れます。これは2種類の混合ガスの為、気体で入れると蒸発の時、混合比が変わると言われている為です。また、新冷媒専用のガスボンベは逆さまにしなくても液体でガスチャージができるようになっているものもあります。
ガスの追加量が不明確な時のガスチャージ方法
少しエアコンの効きが悪いかなという程度の場合は、全部の冷媒ガスを抜いて(ガスを回収して)改めて全量入れるのは、作業時間と費用の無駄になる場合があります。この時は、次のように冷媒ガスの追加補充をする方が良いでしょう。
厳密には、少しずつガスが抜けた場合は沸点の低い方のR32のガスが多く抜けているはずですが、沸点の似たガスが一旦混合されると容易に分離できない性質があるので、そんなに気にする必要はありません。
また、エアコンメーカーからの情報によると、2種類の冷媒ガスの比率が多少変動しても、性能の低下はわずかだということです。
メーカーが推奨するガス量の確認方法
ガスが規定量入っているかどうかを判断する為に、エアコンメーカーが推奨する正式なやり方は次の通りです。
- 低圧側圧力を規定値と比較する
- 電源の電流値を規定値と比較する
- 風量最大で、吸い込みと吹き出しの温度差を規定値と比較する
これらの規定値は外気温度や機種によってまちまちなので、メーカーのその機種の詳しい特性表が入手できる場合だけに限られます。
私が簡易的にやっている追加ガスチャージ方法
私はR22のガスの時から次のような方法でやっています。インバーターエアコンでのガスの量の確認は、できるだけコンプレッサーはフルパワーで、室内機の風量最大で行ないます。
エアコンメーカーのサービスマンもこの方法でやっているのを確認しました。
- 冷房運転で室内機の熱交換器(冷却器)の露の付き具合を見ながら少しずつガスを補充していきます。
- ガスの量が少ない時は、室外機から来たパイプ付近がよく冷えていて、それより先の冷えが悪いのが普通です。
- ガスが規定量になってくると、室内機の 熱交換器楽天 全体が均一に冷えるようになります。そこでガスの追加を止めます。
この方法でうまくガスチャージできるようですが、外気温が変わるとうまくいかない可能性もあります。できるだけ真夏に行うのが良いと思います。ガスチャージは少し少なめかなと思うところで止めるのがミソです。オーバーチャージは何も良いところはありません。
ガスチャージする時の注意事項
エアコン本体へのガスチャージは気体ではなくて、液相で行います。最近のR410用のボンベは逆さまにしなくても液体でガスチャージができるようになっています。
液でガスチャージをすると古いエアコンでは故障するものもありますので、できるだけ時間をかけてゆっくりとガスチャージするのがミソです。冷媒が液から気体になる時には、とても低温になるので、人体に掛からないように手袋等をして、保護してください。
チャージングシリンダーを使う時は、その冷媒専用の物を使うようにしてください。ゲージマニホールドバルブもその冷媒専用の物を使います。冷媒によって接続口の口径が違います。
R410Aのガスは圧力が高いので、チャージホースを外す時にホースの中のガスが一気に出ます。それを防止するには、チャージホースの先にボールバルブを付けておきます。
サービスポートのキャップとバルブのキャップの増し締めを忘れないようにします。これを忘れると長い間にガスが漏れます。