Qマッチを利用したインピーダンス整合
アンテナなどへの高周波の電力伝送は、インピーダンス・マッチングが非常に重要です。VHFやUHFや特にSHFではこれがとても重要です。Q形変成器(Qマッチ)を使ったインピーダンス・マッチングは、比較的構造が簡単なのでアマチュア無線などでよく使われています。
Q形変成器(Qマッチ)とは
この図のように、1/4波長の伝送線路をアンテナと給電線との間に挿入することでインピーダンス整合をする方法をQマッチと言っています。QマッチのQは1/4を表す英語のQuarterから来ています。
この図では、1/2波長のダイポールアンテナを書いていますがアンテナは何でもかまいません。アンテナの特性インピーダンスをZaとします。これに特性インピーダンスZqの給電線を接続しています。
Q形変成器の出力側のインピーダンスをZとすると、Zの値は次のようになります。
Z = Zq2/Za
今、1/2波長のダイポールアンテナの特性インピーダンスを約73Ωとして、1/4波長の伝送線路の特性インピーダンスを100Ωとすると、Q形変成器(Qマッチ)の出力側のインピーダンスは約137Ωとなります。
このように、特性インピーダンスの異なる1/4波長の伝送線路を給電線の途中に挿入すると、インピーダンス変換を行なうことができます。
Q形変成器(Qマッチ)を使ったアンテナの2スタック方法
Q形変成器(Qマッチ)を使ったアンテナの2段又は2列スタックの方法は、アマチュア無線の50~430MHz帯でよく使われています。
この図のようにアンテナから来た50Ω系 同軸ケーブル楽天 の先に電気的な長さ1/4波長の75Ω系同軸ケーブル(5C-2Vなど)を接続します。そうすると、Qマッチセクションで50Ωが112.5Ωに変換されます。
同じ物を2系統作ってこれを並列に接続します。これは同軸のT形コネクタなどを使用します。同軸ケーブルを直接接続してもかまいません。そうすると112.5Ωが半分の約56Ωになります。
この時、アンテナからの50Ωのケーブルは位相を合わせる為に、全く同じ長さにする必要があります。
並列に接続した点から送受信機へは50Ωの同軸ケーブルで接続できます。
Qマッチセクションに使う同軸ケーブルの長さ
Qマッチセクションに使う同軸ケーブルの長さは波長短縮率を考慮して決めます。短縮率はケーブルの種類により異なります。一般にポリエチレンの絶縁物を使った物(5C-2Vなど)の波長短縮率は約0.67です。理論値の1/4波長に0.67を掛けた値にします。
もちろん、Qマッチで使った1/4波長の同軸ケーブルは、1/4波長だけではなく、1/4波長の奇数倍の長さにしても理論上は問題ありません。
しかし、この同軸ケーブル上では定在波が立っていますので、あまり長くすると高い周波数では損失が増えます。やはりQマッチセクションは1/4波長にして、整合の取れている50Ω側のケーブルを延長した方が良いでしょう。
Q形変成器(Qマッチ)を使ったアンテナの4スタック方法1
上記の方法はQマッチを使って、50Ω系の2個のアンテナを50Ω系に変換しています。これをもう一組用意して、更にQマッチで変換すれば、アンテナの4段又は4列又は2列2段のスタックアンテナのシステムを簡単に作ることができます。
Q形変成器(Qマッチ)を使ったアンテナの4スタック方法2
上記の方法はQマッチの部分が6箇所もあります。これをQマッチの部分を2箇所にしたものを考えてみました。
まず、50Ω系の2個のアンテナを並列に接続して25Ωにします。これに50Ω系の1/4波長のQマッチを接続すると、100Ωに変換されます。これをもう一組用意して並列にすれば50Ωになります。
これだとQマッチ部分が少ないので、損失も少ないと思います。また、75Ω系の同軸ケーブルを使う必要がありません。