ダイバーシティアンテナの特徴と利用
ダイバーシティアンテナは自動車のテレビ受信用アンテナのように、複数のアンテナを使用して、常に電波の受信状態の良いアンテナに高速で切り替えています。この為、受信する位置が移動しても安定して電波を受信することができます。
ダイバーシティアンテナとは
身近なものでは、この写真のように、移動する自動車などの テレビアンテナ楽天 に4本のダイバシティアンテナが使われています。
ダイバーシティ(Diversity)とは、多様性を意味しています。つまり、アンテナが1つではなく、複数のアンテナを使用するのが特徴となっています。
特に車などで高速で移動する場合、1つのアンテナでは電波の強さが常に変動して通信が不安定になることがあります。いくら高性能のアンテナでも、1つのアンテナでは必ずヌルポイントと呼ばれる電波の極端に弱い谷間があります。
ダイバーシティアンテナは、このような時に複数のアンテナを用いて、常に電波の状態の良いアンテナに高速で切り替えているのです。よく使われる例としては、車載テレビや無線LANやカラオケ・マイクや携帯電話のアンテナなどです。
ダイバーシティアンテナの構成
ダイバーシティアンテナは複数のアンテナと、そのアンテナを切り替えるアンテナ切替装置から構成されています。複数のアンテナだけでは何の効果もありません。
どのアンテナに切り替えるかは、各アンテナからの電波を受信して、電波の強さなどを検知して判断させています。高速で最も受信が良いアンテナに切り替える必要があります。この為、アンテナよりもアンテナ切替装置の方が電気的には複雑なものになります。
フェージングとヌルポイント
電波というのは、電磁的に空間を伝わる波の性質を持ったものなので、送信アンテナから直接届く直接波や建物や地面や山などに反射して伝わる反射波と合成されてアンテナに届きます。この為、電波が強くなったり、打ち消し合って弱くなったりします。このように電波の強さが時間的に変化する現象のことを「フェージング」と呼びます。
フェージングは送信地点や受信地点の移動だけで起こるのではなく、例えば、短波帯(HF帯)などの電波では、同一地点でも、電離層反射波を受信していると、電離層の状態によって刻々と電波の強さが変化します。これもフェージングと呼んでいます。
車のように移動している場合、フェージング(フェーディングFading)によって電波を強め合うところと打ち消し合うところ(ヌルポイント)との距離は、電波の波長によって違ってきます。
もし、無線LANなどで使われる2.4GHz帯なら、波長は約12cmですから、アンテナの位置が数cm変化しても、電波の強さは大きく違うことがあります。この為、受信アンテナの少しの位置の変化でも強い電波を受信できるようになるのです。
ダイバーシティ方式の種類とその利用
ダイバーシティ方式には、様々な種類があります。前記のように物理的にアンテナの位置を変えて複数のアンテナを配置したものを、空間ダイバーシティと言い一番よく使われています。
また、水平偏波や垂直偏波などのように、偏波面に対応したアンテナを複数使用した偏波ダイバーシティ方式もあります。短波帯の電離層反射波を利用した通信には有効です。
その他には、違った方向からの電波を受信する複数のアンテナを使ったものを角度ダイバーシティと呼び、時間をずらして同じ信号を送受信する時間ダイバーシティや、複数の周波数を送受信に使った周波数ダイバーシティなどもあります。