アッテネータ(減衰器)の特徴と使い方

アッテネータは電気信号を減衰させるものですが、電気の計測や増幅(ブースター)などでは、重要な部品となっています。電気の伝送回路ではインピーダンスが重要で、アッテネータでも使用する回路のインピーダンスに応じた部品を使わなければなりません。計測や無線関係では50Ω系がよく使われ、テレビ関係では75Ω系がよく使われています。

アッテネーターの必要性(役割)と使い方

テレビやラジオや無線機やアンテナなどの電気信号の高周波の伝送回路などでは、回路で扱う信号の強さが決められています。これを無視して使うと、信号が大き過ぎたり、小さすぎたりして様々な不具合が起こります。

ブースターの画像

この写真のような受信ブースターなどでは、入力信号が大き過ぎると、信号が歪んで、アナログ信号ではワイパー現象が起こったり、混変調になったりします。デジタル信号ではビット誤り率(BER)や変調誤差比(MER)が悪くなったりします。逆に小さすぎるとノイズ(雑音)が増えて受信に支障を来たします。

適度な入力信号と適度な出力信号になるように入力に定インピーダンスのアッテネーターを挿入したり、増幅度の調整をすることがとても重要です。

また、定インピーダンスのアッテネーターを挿入することで、信号の反射が減って機器の動作が安定します。計測関係では測定値が安定し信頼性が増します。

アッテネーターでは信号を減衰させますので電力を消費します。つまり、必ず熱が発生します。適正な電力以下で使う必要があります。そうしないと、アッテネーター内の部品が焼けてしまいます。

一般的な定インピーダンス型のF型アッテネータ

一般的なF型アッテネータ

この写真がアンテナの信号の伝送などで使う一般的な単体のF型アッテネータです。F型とはテレビなどでよく使う75Ω系のF型接栓(コネクタ)の事です。

コネクタにはこの他に計測器などでよく使うN型やBNC型やアマチュア無線などでよく使うM型などがあります。

減衰量は一般的には、3dB,6dB,10dB,15dB,20dBの物がよく使われています。

ネジ止め端子用F型アッテネータ

ネジ止め端子用F型アッテネータ

この写真のようなネジ止め端子用F型アッテネータは、最近はあまり使われなくなりました。しかし、ネジ止め端子を使った古い ブースター楽天 ではこのようなアッテネーターを使っていました。

どうして最近はあまり使われないかと言うと、ネジ止め端子はシールドされていない場合が多いので、外部からの不要な信号が入りやすいからです。アッテネーターで信号を弱めると、特に電波などの直接波が混入しやすくなります。(アナログのテレビ信号では画像が二重に映ったりします。)

この写真では、上側がネジ止め端子側となります。下側はF型コネクタのオスネジとなっています。

定インピーダンス型アッテネータの内部回路(T型とΠ型アッテネーター)

T型とΠ型アッテネーター

定インピーダンスのアッテネーターの内部回路は、この図のように、3個の抵抗器で構成されていて、伝送線路のインピーダンスに合わせて50Ω系か75Ω系になっているのが一般的です。

この図のようにT型アッテネーターか、Π型(ぱいがた)アッテネーターになっています。

この定インピーダンスのアッテネーターを使うと、正確な減衰量を得ると共に、インピーダンス整合させて信号の反射を防ぎ、安定な信号伝送を行なうことができます。

また、アッテネーターには使用できるパワー(電力)の上限がありますので、これを必ず守ってください。

定インピーダンス型ステップアッテネーター

上記のような単体のアッテネーターとは違って、定インピーダンス型ステップアッテネーターは信号レベルの減衰量をスイッチなどで簡単に調整することができます。測定器やスペアナ(スペクトラムアナライザー)やSG(シグナルジェネレーター)などでも、内部には正確な定インピーダンスのアッテネータが使われています。

このようなアッテネーターは自作もできますが、減衰量が多くなるとシールドの問題や高周波特性の問題が出てきますので、計測関係では自作は無理でしょう。

定インピーダンスではないアッテネーターとは

信号減衰器の回路図(ライン信号をマイク信号に減衰)

ここまで、定インピーダンスのアッテネーターについて解説して来ましたが、定インピーダンスではないアッテネーターもあります。

この図のような、抵抗を2本使った抵抗分割式(分圧式)の信号減衰回路がこれに相当します。この回路図は、音声のライン信号をマイク信号レベルに減衰させる回路ですが、この入力側は高インピーダンスであり、出力側は低インピーダンスとなっています。

音声信号(オーディオ信号)などの周波数の低い電気信号では反射信号の問題はほとんど無いので、この回路でも問題はありませんが、テレビアンテナや衛星放送などで扱う高周波信号では、このような定インピーダンスではないアッテネーターでは、接続点で不整合となり反射信号の影響で使えません。