感電とアース(接地)について

アース(Earth)の文字通りの意味は地球の事です。アース(接地)をするとは、地球と接続する事です。地球は大変大きな形をしており、電位が非常に安定しているので、地球と低い抵抗で接続すれば、接続した物も電位が安定します。

アース(接地)は電気製品の感電を防止するには、非常に大切なものです。電気機器の絶縁も大切ですが、絶縁だけで完全に感電を防止するのは難しいものです。必ず微小な電流が流れて、敏感な人は感電しますし、絶縁はいつかは不良になるからです。

アース抵抗(接地抵抗)とは(接地とは)

アース抵抗(接地抵抗)とは、アース電極(接地電極)から地球の深部までの大地の抵抗の事です。

この抵抗は地球の深部に電極を入れて測ることができません。接地抵抗の測定方法は「接地抵抗の測定」のページをごらんください。接地抵抗の概念は「接地抵抗の計算」のページをごらんください。

アース(接地)の必要性

電気機械器具のアース棒(接地)は何の為に必要なのでしょうか。アースをしないと危険だと言われているから必要と思っていらっしゃる方もあることと思います。アースをするとかえって漏電ブレーカーが働いてしまうので、アースは無い方が良いと思っている方はいらっしゃいませんか。

大地アースとシャーシーアースの回路図記号

このページではアースは主に安全の為に必要かどうかを考察していますが、それ以外にも機器の動作の安定や電磁波の不要輻射の防止等の為に必要な場合があります。

アースの記号にはこの図のように2種類あります。大地(地球)に接続するアースと、ラジオやテレビや無線機の筐体(きょうたい、シャーシー)に接続するシャーシーアースとがあります。でも、明確に区別していない場合もあります。シャーシアースは主に機器の動作の安定や電磁波の不要輻射の防止等の目的ですることが多いと思います。

柱上トランスのアースの必要性

漏電説明図 左の図の電柱の上にあるトランスで6600Vの高圧を家庭用の100Vまたは200Vに変換しています。この トランス楽天 の2次側とトランスの鉄心はアースされています。

もしこのアースがない場合を考えてみます。このトランスの絶縁が悪くなると1次側の6600Vが2次側の100V/200V回路にかかってきて、電気製品の漏電が有る無しにかかわらず非常に危険な状態になります。

この時2次側がアースされていれば、トランスの絶縁が悪くなった時、柱上トランスのアースを通って大地に電流が流れて行き、柱上トランスの2次側に高圧がかかることは防げます。

中性点(白)をアースする理由は何でしょうか。もし200Vの一端(例えば赤)をアースしても上記の目的は達せられます。しかしこの場合、黒の線は100V回路でも対地電圧は200Vとなります。中性点のアースなら、200V回路でも対地電圧は100Vのままです。対地電圧が低いことは感電した時の危険性が低いと言えます。

このように柱上トランスのアースは安全の為に絶対必要なものなのです。

(ここで議論している電圧は全て実効値です。ピーク値はこの約1.41倍となります。)

電気製品のアースの必要性

柱上トランスのアースがあることにより、家庭内の100Vの片側と200Vの両端子には対地電圧100Vが発生します。つまり上の図面のように電気製品の絶縁が悪くなって製品の外装の金属部分に100Vがかかっている時(つまり電気製品が漏電している時)外装の金属部分に人が触ると感電します。この時、人の立っている足元が湿っていたりすると多くの電流(漏電電流、地絡電流)が流れて人は死に至ることがあります。

この場合もし電気製品に良いアースがあれば、人が外装の金属部分に触っても、電気はアースの方に流れて人体の方は安全です。またこのアース電流(漏電電流、地絡電流)が流れる事により、配電盤の漏電ブレーカーが働いて電気を止めてくれます。

このように湿り気のある所で使用する電気製品等の外装金属はアースが非常に大切なのです。

それでは電子レンジはどうして湿気のない所で使用してもアースが必要なのでしょうか。電子レンジは高圧で扱う電力が大きいので(500W〜1000W位)故障した時に壊れ方によっては外装の金属部分に高圧がかかる可能性があるからです。またもしそうなった時扱う電力が大きいので、人は死に至る可能性が大きいのです。電子レンジの修理中に亡くなることはまれですがあるそうです。 

アースの必要がない場合

全ての電気製品にアースが必要というわけではありません。次のような場合は感電の危険が少なくアースは無くてもかまいません。

接地工事の種類(内線規定)

接地の種類 接地抵抗 接地線の太さ 主な用途
A種接地 10Ω以下 Φ2.6mm以上
(5.5mm2)
高圧または特別高圧用の機械器具の外箱
避雷針
B種接地 150/I Ω以下*1 Φ2.6mm以上
(5.5mm2)
変圧器2次側の接地
C種接地 10Ω以下 Φ1.6mm以上
(2mm2)
300Vを超える機械器具の外箱
D種接地 100Ω以下 Φ1.6mm以上
(2mm2)
300V以下の機械器具の外箱

*1: I=高圧電路の一線地絡電流[A]
普通の電気製品の接地抵抗はD種接地で100Ω以下、接地電線はΦ1.6mm以上です。

接地抵抗計の例

接地抵抗計の写真

このような 接地抵抗計楽天 があると接地抵抗を簡単に測定することができます。電気工事業の登録には必要な測定器です。電気工事業者なら是非購入しておきましょう。

この写真は三和のPDR-100アナログ式のトランジスタ式自動接地抵抗計です。接地抵抗測定方式は定電流方式の3電極法または2電極法で測定します。

古い接地抵抗計ですが、理論に忠実に測定しますので正確な測定が可能で、今でも現役で使っています。0〜1kΩの範囲の測定が可能です。

接地工事は電気工事士がします

このように接地工事は安全のために非常に重要なものですので、接地工事は素人ではできないことになっています。必ず電気工事士に依頼しましょう。

場所によっては接地抵抗100Ω以下の接地工事は専門家でも非常に難しい場合があります。かなり大掛かりな工事になることもあります。また接地抵抗の測定には接地抵抗計が必要となります。

アース線(接地電線)の色

アース線(接地電線、接地線)の色は、国際規格IEC60227で緑/黄色のしま模様の線と決められています。日本では内線規定で緑色または緑/黄色のしま模様の線を使うか、それ以外の線を使う時は緑色の標識を付けるように決められています。

「アースをとる」は禁句です

ところでアース線を接続することを、「アースをとる」と言う場合がありますが、これは安全面からは禁句です。アースを接続することなのか、アース線を取る(つまり外す)ことなのかが不明確だからです。この誤解によって死者が出たことがあるそうです。

感電と危険な電流値

感電と人体の反応
感電電流 人体の反応
0.5mA 何も感じないか、電流の流れる場所によってはわずかにピリピリ感じます
1mA ビリビリ感じます
5mA 電撃を痛いと感じます
50mA 筋肉が収縮して死に至ることがあります
100mA 非常に危険です

感電によって不快な電流を感じるだけでなく、たとえわずかの電流でも心臓等の身体の重要な部分を通過すると死亡することがあります。

低電圧での感電による死亡原因には心臓停止(心室細動)や呼吸停止が多くあり、高電圧による感電事故ではそれに加えて放電によるアーク熱や人体を流れる電流によって発熱することによる火傷があります。感電による火傷は身体の深部を電流が通るので非常に危険です。

直流と交流とでは感電の感じ方が違います。直流は筋肉が収縮して硬直するのに対し、交流では筋肉が震えるようにけいれんします。直流の1000V程度が非常に危険だといわれているのは手で電線に触れた時に電線をつかんでしまって筋肉が硬直して離れないからです。

昔、真空管式の送信機(直流で500〜1000Vの電源でした)をいじる時は、夜中に1人で作業をしないことが重要だと無線雑誌に書いてありました。これを見てからは夜中に1人で真空管式の送信機の中を触らないことにしました。

もし、漏電ブレーカーが付いていても、感電して地絡電流が流れれば約30mAの電流が約0.1秒間人体に流れる訳でかなりの衝撃があります。私もこのような感電事故の経験がありますが、もし漏電ブレーカーが付いていなかった時の事を思うとゾッとします。