電気柵用機器の接続方法
蜂、獣、イノシシ用電気柵に使用する電源装置(牧柵器、電撃装置)の接続の情報です。電気柵システムの原理、電気柵用電撃装置の結線、猿やハクビシン用電気柵の設置例、電撃装置の結線での注意事項などを解説しています。
電気柵システムは高電圧を発生させる電撃装置と、田畑の周囲を囲んだ電気柵とアース棒から構成され、電撃装置から発生した高電圧を電気柵に印加しています。
電気柵システムの原理
電気柵用の電撃装置から接続された電気柵に高い電圧を掛けておきます。通常は高圧の電流はどこにも流れていません。イノシシ等の動物が電気柵に触れると動物の体を通じて電流が大地に流れていきます。
大地に流れた電流は アース棒楽天 を通って電撃装置のアース端子に戻っていきます。動物の体を電流が流れる事で、電気ショックを感じて電気柵は危険だと知り以後柵には近づかなくなります。
このように原理は簡単ですが、いくつか注意する点があります。まず電気柵の電線には電流が流れるようにして、支柱や草を通して漏電しないようにする必要があります。電圧が高いのと支柱が多く距離が長いので、草でも多くなれば簡単に漏電します。柵とアース間の抵抗の目安は50kΩ以上が理想です。10kΩ以下にしないように管理して下さい。
また動物の足から大地に電流が流れて行き易いように、足元は草や湿った土地のようなものにする必要があります。乾いた土地やコンクリート、石畳、アスファルトでは十分な効果はありません。動物とアース間の抵抗値の目安は50kΩ~1kΩ程度です。
アースも重要な要素になります。できるだけ湿った土地に深く打ち込んだ方が効果があります。アースの効果は約10m以上離れれば10km先でも100km先でも同じです。この接地抵抗の目安は100Ω以下が理想ですが、500Ω以下なら問題無いでしょう。
電気柵用電撃装置の結線方法
- バッテリーとの接続電線には100Vに使う普通のビニルコードが使えます。高圧の接続電線には短い距離でどこにも接触しないのなら、普通のビニルコードでもかまいませんが、電気工事用のVVFΦ1.6mm(VA線とも言う)か、キャプタイヤコードのような2重に絶縁された電線を使った方が良いでしょう。電気柵用の裸電線には電気柵用の電線がホームセンター等でも市販されていますが、私は普通の亜鉛引きの鉄の針金やステンレスの針金(Φ1mm程度)を使っています。これを鉄筋を入れたビニルパイプの支柱にビニルテープで止めているだけです。
- 電気柵の段数は猪用には2段でも良いと思いますが、ヌートリアや狸等の小動物用には3段または4段位で上下の間隔を狭くした方が良いと思います。また、電気柵の途中には「高圧危険」とか「高圧、感電危険、さわるな」と書いた危険表示を必ずしてください。
- 大地アースは市販のアース棒を湿気の多い所に打ち込んでください。余程乾燥した所でなければ、アース棒1本で十分です。接地抵抗は500Ω以内なら問題ありません。アース棒の代わりに長さ2m程度の被覆の無い銅の単線(直径1.6~2mm程度)を使うこともできます。これを湿った土の所に深さ約20~30cmの溝を掘って埋めてもかまいません。またはこれを田圃の水の中に入れても良いと思います。
- 電気柵の設置場所は地面がアスファルトやコンクリートの場所は避けて土のある所に設置して下さい。そうしないと動物と大地との間の抵抗が大きくなり、電気柵の効果が少なくなります。
- 電気柵の長さはどのくらいまでOKかとの質問が時々あります。電線の抵抗だけから考えると普通の電線なら10キロメートルでもOKです。(直径1mmの銅線で長さ10kmの抵抗値は約230Ωですから問題ありません)それよりも柵の支柱の絶縁の良し悪しが問題です。雨が降った時の支柱の絶縁が1本で5MΩとすると、10本で500kΩ、100本で50kΩ、500本で10kΩですから、支柱の間隔が4mなら500本で2kmになります。草の影響もありますのでこの半分の1km位が限界かも知れません。絶縁と管理が悪ければ100mでも駄目な場合があります。電気柵の長さは電線の長さで決まるのではなく、柵の長さつまり支柱の本数とその絶縁と管理状態で決まります。
- また電気柵の電線と大地間の静電容量が問題となることがあります。高圧のパルスの場合はこの容量が大きくなると電圧が低下する原因になることがあります。電気柵の長さは長くても500m~1km程度以下で使用する方が良いでしょう。(電線の長さで言うと、柵が2段なら電線の長さは1km~2km程度以下)
- 電撃装置にはリセッタブルヒューズが付いていますが、安全の為にバッテリーの端子に近い所に更に3A程度のヒューズを入れる事をお勧めします。
- 新品の自動車用のバッテリーを電源に使用した場合は、1ヶ月以上でも電源が持つと思います。バッテリーが古いと容量が少なくなっている事もあるし、自己放電もありますので、バッテリーを長持ちさせる為には、2週間に1回程度で充電する事をお勧めします。
- 太陽電池を使ってバッテリーの充電をする場合は、最大パワー約2~3W(12V150~250mA)のソーラーバッテリーを使ってください。これを図のようにバッテリーに並列に接続します。昼間は平均0.5~1W程度の発電をするので過充電にも過放電にもならないはずです。でもバッテリーは自己責任で管理してください。太陽電池には逆流防止ダイオード入りを使ってください。
猿やハクビシン用電気柵の接続例
猿やハクビシンは柵に飛びついて電撃を受けずに侵入するケースがあるので、高圧とアースを交互に奇数段配置した方が良いと思います。この場合、一番上と一番下の段には高圧を配置します。また柵の高さは高めにして、近くの木や建物からも離すようにします。
柵の下の部分を網やトタンにして、その上に電気柵を設置する方法もあります。
高圧とアースを交互に配置した場合は、大地アースはしなくても良いようにも思えますが、必ず大地アースもしてください。そうしないと、もし高圧が大地に漏電した場合や、高圧と大地間の静電容量の影響で、アース端子やバッテリーに触ると感電します。また高圧だけに触れた時感電しません。
このような電気柵を設置する場合は柵と大地間の静電容量が多くなるのと、漏電がどうしても増える為、電気柵の長さをあまり長くしない方が良いと思います。このように配置した5段の場合の柵の長さの目安は約300m以下です。
もちろん、このようにして作製した猿やハクビシン対策用の電気柵は猪にも効果があります。
電撃装置の結線での注意事項
ひとつの電気柵システムには一台の電撃装置(高圧発生装置)を接続します。けっして2台以上の電撃装置(高圧発生装置)を接続してはいけません。
一般に電源装置というものは2台を並列に接続することはできません。並列接続すると装置が壊れるのが一般的です。
どうしても2台の電撃装置を使いたい時は、柵を途中で切り離して、それぞれに電撃装置を接続します。