危険な電気柵と危険でない電気柵
電気柵というものは何らかの危険性があります。安全な電気柵というものはありません。危険な電気柵による感電死亡事故が起きています。危険な電気柵とはどういうものかを解説しました。危険な電気柵は絶対に設置しないようにしてください。
電気柵による感電死
自作で違法な電気柵による感電死のニュースが時々報道されています。感電死が起こる場合は全て電気の供給が連続的に行なわれていて、電流を制限するものが無いことが大きな問題となっています。
このような電気柵は大変危険で、水気の多い場所で使用すると本当に死に至ることがありますので、絶対に設置しないようにしてください。下記に詳しく解説しています。
危険な電気柵の例(100Vをそのまま使用)
この図のように、家庭用の電気(商用電源)の100Vをそのまま電気柵に接続したものです。これは違法ですが、一番簡単にできるので、素人が簡単に考えそうなことです。
この図のように漏電ブレーカーが設置されていれば人が死ぬようなことはまず無いと思いますが、家庭に漏電ブレーカーが設置されていない場合は今でも多くあります。
漏電ブレーカーには高感度型の15mAで0.1秒以内で動作するものを別に取り付けて使いましょう。と、言っても私がこのような電気柵の使用を勧めているわけではありません。市販の電気柵を適切に使ってください。
また、5mA以下に電流を制限する抵抗(約20kΩ以上)が電気柵の元に直列に設置されていれば更に良いのですが、素人の設置では抵抗が設置されていないようです。(5mAというのは、まず安全であろうと思う私の個人的な見解です。)
漏電ブレーカーも抵抗も無い場合で、死亡事故が起こっています。絶対にこのような電気柵は設置してはいけません。これは殺人電気柵と言えるものです。知らなかったでは済まされません。
危険な電気柵の例(絶縁トランスで100Vを昇圧して使用)
2015年7月19日に静岡県西伊豆町で起こった電気柵による死亡事故は、報道された情報を総合するとこの図のような回路と思われます。
絶縁トランス楽天 は100Vを440Vに昇圧するものだったようです。また、電気柵に直列に入れた電流を制限する抵抗は無かったようです。もし、電流制限をするなら、440Vなら約1.14mA以下にする必要がありますので、約390kΩ以上の抵抗が必要です。(100V5mAの時とほぼ同じパワーとする場合)
絶縁トランスを使うと漏電ブレーカーが設置されていた場合、電気柵で漏電してもこの漏電ブレーカーは動作しません。つまり、この場合は漏電ブレーカーが設置されていても電気柵の感電防止には何の役目も果たさないことになります。
このように絶縁トランスで昇圧して電流制限していないものはとても危険です。殺人電気柵と言えると思います。電圧が高くて電流が流れ放題なので、子どもの指が切断されたり、手に火傷をしたのもこのせいです。絶対にこのような電気柵を設置してはいけません。
440Vは100Vに比べて約20倍も危険です
100Vでも危険なのに440Vにすると、どの程度危険なのかを考えてみます。440Vだと電圧が4.4倍になり、人体が同じ抵抗値なら電流も4.4倍になります。
人体に掛かるパワーは電圧と電流の積なので、4.4x4.4=19.36となり100Vの時の約20倍ものパワーが人体で消費されることになります。将に殺人電気柵と言わなければなりません。
危険でない電気柵とは
上記以外の市販の電気柵用の高圧発生器でも安全とは言えませんが、すぐ死ぬ程の危険はありません。安全な電気柵装置というものはこの世に存在しません。少なくとも効果のある電気柵は、触ると電気が体に流れてびっくりする程の電撃があります。
驚く程の電気('電流)が人体に流れれば、人体に何らかの影響があります。健康で元気な人なら問題は無くても、体の弱い人や病気の人や幼児や老人にとっては安全とは言えません。
連続的に電圧を供給する電気柵を設置する時は、電流制限を5mA以下にしてください。感電事故が起こってからでは取り返しがつきません。
市販の電気柵について
市販されている電気柵用の高圧発生装置は、電圧が約5000~1万ボルトで、間欠的にパルス状の電圧を供給しています。
これは効果のある電気柵を作ろうとすると、電圧を上げないと野生動物に電流が流れにくいからです。また、パルス状に間欠的に電圧を供給しないと効果のある電気柵では危険だからです。
パルス状の電圧1回のエネルギーは、市販の電気柵用の高圧電源では約0.1~25ジュールのものが多いようです。私は数ジュール以上のエネルギーの物は危険だと思っています。特に老人や子供には何回も感電すると危険です。
このような物を設置する時は設置する場所などをよく考えて危険のないように設置してください。できれば1回のパルスのエネルギーは1ジュール以内のものを設置するようにしてください。