デジタルとアナログテレビ放送の周波数利用効率比較
アナログテレビ放送をデジタル化すると、同じ周波数帯域で多くの情報を送ることが可能となります。アナログ放送に比べてデジタル放送は、数倍も電波の利用効率が良いのです。
デジタル放送にする目的は周波数の有効利用です
最近は携帯電話の普及等で電波の周波数が足りなくなってきています。これらの需要に応える為に、アナログ放送がデジタル放送に移行してきたのです。
アナログ放送をデジタル化すると、同じ周波数帯域で数多くの情報を送ることが可能です。地上アナログ放送が完全にデジタル化されると、最終的に現在のテレビ放送周波数の約1/3を新たな用途に使うことができるのです。
アナログ放送はチャンネルをひとつ置きにしか利用できなかった
テレビの1つのチャンネルは6MHzの周波数帯域を使用しています。アナログ放送では、チャンネル9に放送があると、チャンネル8と10の放送は利用できませんでした。9チャンネルの下は7チャンネルで上は11チャンネルを利用していました。
これは、アナログ放送の電波の性質によって、隣のチャンネルに放送があると、隣のチャンネルの妨害が問題となったからです。この為、アナログ放送はチャンネルをひとつ置きにしか利用できなかったのです。
アナログ放送でも、CATVでは隣のチャンネルも利用しています。これは電波をケーブルで伝送していますので、チャンネル間の電波の強さを同じにできるからです。アンテナを使って電波を伝送する場合では、チャンネル間の電波の強さが受信時に変動するので、隣接したチャンネルは利用できないのです。
これに比べて、デジタル放送では、電波が隣接しているチャンネルでも、隣のチャンネルの妨害は全く問題無く受信ができるのです。これだけで2倍の電波の有効利用ができることになります。
これは、アナログとデジタルの特性によって、少しの妨害は全く影響しないことと、デジタルは、もし妨害で信号が少しぐらい変化しても誤り訂正ができるという特性によるものです。
デジタル化や圧縮技術による電波の有効利用
地上波デジタル放送はデジタル化や信号の 圧縮技術楽天 によって、従来の6MHz帯域の1つのチャンネルで、標準画質の3チャンネル分とワンセグの放送やデーター放送等を行なうことができるようになっています。(ハイビジョン放送は1つの放送で6MHzのほぼ全てを使っています)
つまり、デジタル化や信号の圧縮技術によって、3倍以上も電波の有効利用ができることになります。前記の、隣接チャンネルの利用による電波利用の効率化と合わせると、6倍以上も電波を効率よく利用できることになります。
単一周波数ネットワーク(SFN)を利用した電波の有効利用
地上デジタルテレビ放送ではOFDM変調を採用しているので、同一周波数での中継が可能です。これは単一周波数ネットワーク(SFN : Single Frequency Network)と呼ばれています。
従来のアナログ放送で使われていた、マルチ周波数ネットワーク(MFN)では、親局とは異なる周波数で中継する必要がありました。この点でも地上デジタルテレビ放送は電波を有効に利用できることになります。
地上アナログテレビ放送の電波の利用状況
- VHFローチャンネル(1ch~3ch)
- 90MHz~108MHzの18MHz
- VHFハイチャンネル(4ch~12ch)
- 170MHz~222MHzの52MHz
- (本来は54MHz必要ですが、7chと8ch間には2MHzの周波数の重なりがあります)
- UHF(13ch~62ch)
- 470MHz~770MHzの300MHz
これらの合計は370MHzとなります。62チャンネル分です。
現在の地上デジタルテレビ放送の電波の利用
- UHF(13ch~62ch) 50チャンネル分
- 470MHz~770MHzの300MHz
現在はテレビに割り当てられているUHF全部を利用しますので、50チャンネル分300MHzとなります。
将来の地上デジタルテレビ放送の電波の利用
- UHF(13ch~52ch) 40チャンネル分
- 470MHz~710MHzの240MHz
将来はテレビに割り当てられているUHFの60MHzを他に転用しますので、40チャンネル分240MHzとなります。