アナログ用電界強度計で地デジを測定した時の補正値
現在地上デジタル放送の電波と地上アナログ放送の電波が送信されていますが、私はアナログ用の電界強度計しか持っていないので、これで地デジの電波を測定できないものかと考えてみました。補正値は+7dBとなりました。スペクトラムアナライザーを使って電界強度を比較測定してみました。
スペクトラムアナライザー(スペアナ)とは
スペクトラムアナライザー楽天 (Spectrum analyzer)(スペアナ)とは、横軸(X軸)に周波数をとり、縦軸(Y軸)に電圧または電力波形をデシベル(dB)表示するオシロスコープに似た測定器です。略してスペアナと呼ばれています。デシベル(dB)表示ですから、電圧と電力の区別はありません。(例えば20dBなら電圧で10倍、電力で100倍です)
簡単に言えば、周波数成分を見ることができる測定器です。スペクトル分析器とも呼ばれています。
スペアナで見た地デジ電波とアナログ電波の比較波形(RBW:300kHz)
この波形はスペアナで見た地デジ電波とアナログ電波の比較波形です。RBW:300kHz、485MHz~685MHzの範囲を測定。
従来のアナログ電波を測定する電界強度計で測定したものと同等の測定結果となります。私が使っているリーダーの952型TV/SAT電界強度測定器(RBW:280kHz)でも同等な測定結果になりました。
23CH:テレビせとうち、25CH:瀬戸内海放送、35CH:テレビ岡山、が地上アナログ放送(送信電力20kW)の電波です。各チャンネルの下側の電波が映像で4.5MHz上側の約6dB小さいのが音声の電波です。
18CH:テレビせとうち、20CH:西日本放送、21CH:山陽放送、27CH:テレビ岡山、30CH:瀬戸内海放送、32CH:NHK総合、45CH:NHK教育、が地上デジタル放送(送信電力2kW)です。地上デジタル放送はOFDM (Orthogonal Frequency Division Multiplexing) 方式で、数千個のキャリアが5.57MHz の帯域幅一杯に非常に近接して並んでいます。電力が帯域全体に分布しているので、電界強度の測定は、ひとつのチャンネル全てのキャリア電力の総和を測る必要があります。
アナログ用電界強度計での測定結果の補正値
(Resolution Band Width)(スペクトラムアナライザーのIFフィルタの帯域幅)がこの場合は300kHzとなっています。地デジは1チャンネル約6MHzで送っているので、この20倍の帯域で測定する必要があります。
つまり、電力で20倍は13dBに相当します。(10*log20≒13)この波形に約13dB加えたものが地デジの電界強度となります。
上のデジタル放送の測定値(画面の-65dB付近)に13dBを加えると画面で-52dB付近となります。これはアナログ放送より約10dB下がった値となり、放送電力の差10dBとほぼ一致しますのでこれが正しいことがわかります。
地デジの電界強度は平均値で表示していると思われるので(バンド内の全電力なので平均値で良いはず)、アナログ用電界強度計の尖頭値を平均値に補正するには-6dBしてやる必要があります。
そうすると +13 -6 = +7dB の補正を加えれば良いことがわかります。(もしこれらの考えが間違っていたら教えてください。)
従来のアナログ電波を測定する電界強度計(尖頭値検波、RBW:280~300kHz)で地上デジタル電波の電界強度を測定する場合は、測定した値に+7dB補正する必要があることがわかります。これがわかればとりあえず特に地デジ用の電界強度計を買う必要はなさそうです。
しかし、アナログ用の機器では、MER(Modulation Error Ratio:変調誤差比)、BER(Bit Error Rate:ビット誤り率)等の項目を測定することはできません。
これが測定できなくても従来のアナログ放送で問題ないようにしたアンテナシステムなら、地上デジタル放送でも問題はありません。この方針に従ってアンテナやブースターを調整すれば良いわけです。
スペアナで見た地デジ電波とアナログ電波の比較波形(RBW:1MHz)
この波形はスペアナで見た地デジ電波とアナログ電波の比較波形です。RBW:1MHz、485MHz~685MHzの範囲を測定。
上記のRBWを300kHzから1MHzに変更したものです。RBW(Resolution Band Width)(スペクトラムアナライザーのIFフィルタの帯域幅)を約3.3倍にしているので、地デジのレベルが上記のものより約5.2dB大きくなっています。
地デジは1チャンネル約6MHzで送っているので、更に6倍の帯域で測定する必要があります。つまり、この波形に約7.8dB加えたものが地デジの電界強度となります。今回は帯域幅6MHzでは測定していません。
これ以上RBWを広くすると、隣のチャンネルまで測定するので意味がありません。現に、20CHと21CHの隣接チャンネル部では、隣のチャンネルの影響で境目部分が見えなくなっています。
ここで使ったローデ・シュワルツR&SのFSL18の主な仕様
- 周波数範囲:9kHz~18GHz
- I/Q復調帯域幅:28MHz
- レベル測定確度:<1.2dB(18GHzにて)
- 分解能帯域幅:1Hz~10MHz(ゼロスパンにて20MHz)
- 高速測定:
測定スピード:80スイープ/秒(ゼロスパンにて)
周波数カウンタ:分解能0.1Hzで<50ms - 多様な測定機能:パワー・センサ接続によるパワー測定、雑音指数/ゲイン測定、AM/FM/PhiM復調、他
- サイズ (W x H x D):342.3mm × 158.1 mm × 367.0 mm (ハンドルを除く)
- 重量:<8kg