PIC電源回路の工夫(簡単なPIC電源回路)

PICマイコンは外付け部品が少なくても、高機能の回路を作ることができます。PICマイコンを使って様々な機器を作っている内に、簡単な電源回路でうまくPICが使えるようになったので紹介します。PICの電源回路の直流インピーダンスを高くするのがミソです。

一般的なPICの電源回路とその問題点

一般的な PICマイコン楽天 の電源回路の多くは、PICの電源は5V以下なので、乾電池を使ったり、5Vの定電圧電源を使ったり、9Vや12Vの定電圧電源から3端子レギュレータを通して5V以下の電圧にして使ったりしています。

これは、8ピンのPICの消費電流が約1から100mAと大きく変動する場合を想定すると、定電圧電源か3端子レギュレーターを使わざるを得ないからです。そうすると、PICの電源として、大容量のものが必要となります。また、電源の直流インピーダンスも低いものが要求されます。

電源インピーダンスを低くすると、もし、PICがラッチアップした時、PICに大電流が流れて、PICが壊れることがあります。また、3端子レギュレータにも容量の大きいものが必要で、部品の価格アップにもなります。

電源を直結する場合には問題になりませんが、ACアダプターで電源を供給する場合、ACアダプターの電圧や極性を間違えたりすると、PICや回路部品を壊してしまうことがよくあります。PICを使った製品でACアダプターを間違えて壊した例を見たことがあります。

工夫したPIC電源回路の例

PICの電源回路の工夫

この回路が、私が工夫したPICマイコンの電源回路の例です。要するに、PICの電源回路の直流でのインピーダンスを非常に高くしてあるのが特徴です。

つまり、12Vの電源から、1.5kオームの抵抗を通してPICに接続しています。

この電源の直流抵抗を高くすることで様々なメリットが生まれます。一般的に回路設計をする場合、電源回路のインピーダンスは低くするのが鉄則です。

工夫したPIC電源回路の詳しい説明

PICの電源電圧の安定化には小型の ツェナーダイオード楽天 を使っています。ツェナーダイオードに直列にLEDを接続しているのは、これをPICの電源表示にも利用している為です。

普通のダイオードもLEDも、順方向ではツェナーダイオードと同じような動作をします。つまり、0.6から1.8V程度の定電圧動作をします。

3.9V用の小型ツェナーダイオードの電圧は、3mA程度の電流では約3.2から3.3Vとなります。LEDの順方向電圧は約1.7から1.8Vとなりますので、この直列回路の電圧は約5Vになります。

もちろん、動作の安定化の為に、PICが動作する周波数で電源回路のインピーダンスを下げる必要があります。これは、PICの電源ピンとアース間の最短位置に適度な容量のバイパスコンデンサが必要な事を意味します。

具体的には、低い周波数で必要な10μF程度の電解又は積層セラミックコンデンサと、高い周波数で必要な0.1μF程度のセラミックコンデンサの併用が必要になることもあります。

PICマイコンには約1mAの電流しか流れていません。つまり、PICマイコンの出力は、ソース電流として使う場合は、FETかトランジスタを駆動して使います。

または、PIC側に電流を吸い込むようにして(シンク電流として)使います。こうすると、PICの消費電流はわずかで済みます。

この回路例では、PIC12F629の3番ピンの出力はFET駆動になっています。6番ピンはトランジスタ駆動になっています。5番ピンはPICに電流を吸い込んで使っています。電流を吸い込む場合は、その電源電圧はPICの電源電圧以下にする必要があります。

工夫したPIC電源回路のメリット

上記のように、PICの電源回路の直流インピーダンスを高くすると、もし、PICがラッチアップしても、PICに流れる電流がわずかなので、PICが壊れることはありません。また、ラッチアップそのものが起こりません。従ってそれによってPICが壊れることもありません。

もし、ACアダプターの電圧や極性を間違えて接続しても、電源のインピーダンスが高いので、PICやその周辺部品が壊れることはありません。

このような回路は、何と言っても回路が簡単なので、安く作ることができます。回路が単純なので故障も少ないと思います。

この回路はPIC回路の消費電流が少ないので、PICそのものの動作を停止させるのも簡単にできます。つまり、不必要な時にはPICの電源供給を止めておけるのです。省エネルギーの回路が簡単に作れます。

ラッチアップとは

ICやPICを作る時に、シリコンウェハー上に回路を作成していきます。この時、設計上の回路と共に、期待していない位置にもトランジスタやダイオードやサイリスタなどが作成されてしまうことがあります。

このように生産の途中で「寄生トランジスタ」や「寄生サイリスタ」と言われるものができているものです。通常にICやPICを仕様書に従って使う限りに於いては、これらは何の問題も起こしません。

しかし、電源電圧より過大な入力信号を端子に加えてしまったりすると、その予期しない「寄生サイリスタ」などが期せずして導通してしまうことがあります。それが「ラッチアップ」という現象です。