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智子の投稿集1
赤いミトン手袋完成
一月九、十日の二連休、他の家族は外出で二女と私が家に居た。久し振りにゆったりとした気分で過ごす。小学五年生の二女は、ゲーム、書きぞめ、ビーズ手芸と忙しそう。ビーズ手芸を見ているちに、かねてより編んでと頼まれていたミトンの左手を仕上げようと思いついた。
一年前にもなろうか、長女が図書館から数冊の編み物の本を借りて来た。赤いミトンが気に入り編んで欲しいと言う。並太の赤い毛糸で編み始めているうち、本の返却日がせまり返す。それでも何とか右手の方は編み上げた。それから、興味が失せ、いつしかまた冬が来ていた。その間、幾度となく、その赤いミトンは、私の目にも止まった。毛糸や編んだ手間と時間を考えると、簡単には捨てられなかった。
「お母さん、これからミトンの左手を編むよ」
「どうやって」
「全体の大きさを計り、目と段の数を調べれば、大体わかる」
「そうなん?」
と驚きの表情。ここで、母の偉大な所を見せておかねばと、完成目指して熱中する。右手は輪編みにしていたが、今回は平に編んで側面を針でとじることにした。模様も今回は、縄編み三本に省略。糸が同じの似て異なる左右のミトンが完成。しかし、二女は手にはめて、「あったかーい」とほほえんでくれた。
家電販売 石川智子 48(岡山市東花尻)
岡山読売フアミリー2月号(2000.2.9)
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楽しみ多い庭のダイダイ
猫の額ほどの庭の南東の角に、ダイダイの木を植えている。
この木は、結婚して間もないころ、大阪の枚方市の地に植えた。そこで五年を過ごし、引っ越しの際、忘れず掘り起こし、岡山の大地に植えた。
そして、十八年後、背丈二メートルに成長した。実はダイダイ色で、冬になると、濃い緑の葉の間から自己主張をしている。その実もこの冬は残り五、六個となった。
大きい実は直径八センチで、約二百五十グラムもある。一個搾ればなべ物のポン酢代わりにして、四、五人分は十分賄える。取れたての果実を味わうぜいたく、食欲をそそる香り、味と、ほめてあげることばかり。
栽培に格別の世話もしていない。自宅で精米した時に出るぬかを時々、根元に振り掛ける程度だ。木の下には、春にスイセン、チューリップが咲き、夏にゼラニウム、冬にハボタンを植える。そんな関係で、少々の肥料や水のおこぼれに預かっているかも知れない。
春、黒アゲハが優雅に舞ってくれる。薬剤を一切与えていないので、青虫が葉を食料にして育つ。白い小さな花もかわいい。
こうして考えると、ダイダイの木は、冬だけでなく一年中楽しませてくれていたんだ。ダイダイよ、末永くよろしく。
石川 智子(岡山市、自営業、48歳)
読売新聞朝刊 ティータイム欄(2000.3.3)
励ましの言葉
昨年の夏、一冊の本が届いた。メモリードグループが創業30周年を記念して、「ありがとう」をテーマにエッセイを募集していた。その入賞者のエッセイ等が載った30周年記念誌であった。
ガガガーン。てなことは、私はダメだったんだ。改めてショックを感じる私がいた。入賞者への通知日をとうの昔に過ぎていたのだから、今更何を考えているのだ。
しかし自分なりに、かなりまとまった作品に仕上がったなと思っていただけに、余波はきつかった。
それでも、落ち着いて読んでみると、さすがに選ばれた作品は、どれも心を鋭く揺さぶる感動的なものばかりであった。
選評を読んでいくと、上之郷利昭先生の言葉にくぎづけとなった。「選からもれた作品の中には入賞作より完成度の高いものが一、二あった。最初サッと読んだ時には[うまいッ]という印象が残る。しかし、訥々とした語り口の素人っぽい作品のほうが味わいが出てきて、うまい作品は次第に新鮮さが薄れていく」
そうなんだ、私の作品はこうだったんだ。「今回の審査では、そういう応募者は”プロ的うまさ”があったとしても、入賞の対象とすることを遠慮していただいた。・・中略・・そういう人達は失望しないで、”プロ的うまさ”にも賞を与えるような他の公募を探して応募し、さらに腕を磨かれることを期待したい」
落ちた者に対して、まだまだフォローして紙面をさいてくださっていた。私のエッセイは、上之郷先生の言われる”プロ的うまさ”の作品に当てはまらないかもしれないが、この励ましの言葉はそのままいただいて、何度ボツになっても、遅々とした歩みでもいいから、頑張って行こうと思う。
(岡山市 石川智子 48歳 自営業)公募ガイド 6月号 (2000.5.9)
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母校のクスノキ
私の母校、岡山県小田郡矢掛町立川面小学校の校庭には、大きなクスノキが三本そびえていた。校門を入ってすぐ右手に、大きく枝を拡げ陣取っていた。
ある日の朝礼で、校長先生が話された。
「皆さん、校門のそばにあるクスノキを見てください。大きな木ですね。植えてから百年経っているかもしれません。最近、根っこに足を引っかけて、ころんでけがをする人がいます。皆さんが教室から校庭に出る時、この木がとてもじゃまなことは、校長先生もよく知っています。木が大きくなるにつれて、根っこも大きくならないと支えきれません。地面の辺りは、もう木なのか根なのかわからないような所もあります。木を切ってしまえば、もう誰もけがをしないでしょう。しかし、このクスノキはこの地に植えられ、ずっと小学校の歴史を見て来ました。こんな大木になる迄には、台風や大雨、雷や日照りにも合って来たことでしょう。皆さんのおじいさん、おばあさん、お父さん、お母さんの中にも、このクスノキに懐かしい思い出がある方もいらっしゃるでしょう。ですから、簡単に切ってしまうのではなく、このクスノキを大事にしたいと思います。校庭へ出る時は走らず、木の根っこをよく見て足を上げて歩きましょう。それから、クスノキは樟脳といって、タンスに入れる虫よけの薬の材料になります。この木でタンスや船を作ると虫がつかないので、とても喜ばれたそうです。皆さんも、このクスノキの様に大きな人間になってください。身体だけでなく心も大きく」
この話を聞いたのは、私が五、六年生の頃だと思う。それから、私達のクスノキを見る目が変わった。とても立派に見え、おじいさん、おばあさんのように親しみを感じた。クスノキは運動会には、退場門の飾り付けがされ大活躍であった。休み時間には、かくれんぼや陣取りゲームに利用された。図画の時間には絵にしたり、実を使って工作をした。
卒業して三十六年、母校もとうに鉄筋コンクリートに建て替えられた。私は、木造校舎やクスノキの思い出が壊されると思い、母校を遠ざけてきた。
ところが最近、所用で母校の近くを車で通り過ぎた。(あった、あった、クスノキが。残っていて良かった。安心した)
クスノキは、遠い昔と同じように、青い葉をハラハラと風になびかせていた。
岡山市 石川智子(48歳)
「森のピノキオ」山陽新聞出版部発行 (2000.8 )
ドイツから娘のメール
朝七時半ごろ、PHS(簡易型携帯電話)がピコピコと鳴った。何だろうと電話を手に取ってみると、Eメールあり、の表示が出ている。
PHSを持つようになってまだ間がなく、もたもたしながらも操作してみると、大学二年生の娘からのメールだった。
「私は今、ドイツにいます。風邪気味だしハプニングが多くて大変だけど、元気です。あさって岡山駅まで迎えに来てね。それではバイバイ!」
すべてローマ字表記。娘は大学の「語学と文化研修の旅」に参加している。十一日間の旅程で、ギリシャ、イタリア、スイス、ドイツを回るコースだ。寒さの厳しいスイス、ドイツへ行くとなると風邪が心配だったので、使い捨てカイロやビタミンC入りのあめを持たせた。メールの様子からすると、ひどい風邪ではなさそうなのでひと安心。
それにしても、ドイツから一瞬のうちに岡山までメッセージが届く時代になったとは。これがIT革命なのだと、驚くとともに、感激した。
石川 智子(岡山市、自営業・49歳)読売新聞 朝刊 ティータイム欄(2001.2.28)
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