UHF/VHFロンビックアンテナの実験と実用化

長さが数波長もある進行波アンテナの一種のロンビックアンテナを作成し、UHF/VHFのテレビ受信用として長年実用に供していた体験記です。進行波アンテナで指向性が鋭く、利得も比較的大きく、何といっても広帯域なのがロンビックアンテナ(Rhombic Antenna)です。

ロンビックアンテナ製作の概要

一辺の長さを6mとして、100MHzで2λ、300MHzで6λになります。全長で約12mとなりました。たぶん全世界でもこのような巨大なロンビックアンテナでテレビの電波を受信しているのは私だけでしょう。世界でひとつだけと思ったらわくわくしませんか。(誰も興味無いか)

このアンテナはパワーが小さければ アマチュア無線楽天 の送信にも使えます。方向の一定した固定局間の通信には良いかも知れません。(144MHz,430MHz)

UHF/VHFロンビックアンテナの製作方法

ロンビックアンテナの特徴(長所と短所)

ロンビックアンテナとは、一辺の長さが数波長の電線(ワイヤー、エレメント)を菱形に配置して、菱形の片方から給電して、もう一方に終端抵抗を取り付けたアンテナです。一般に終端抵抗は約600Ω、給電点インピーダンスは約600Ωです。給電点から終端抵抗を取り付けた方向に非常に鋭い指向性を持っています。昔から短波(HF)の送受信用に使われていました。

ロンビックアンテナの片側だけを地上に出し、エレメントを曲げないで直線状にしたものが、ビバレージアンテナと呼ばれるものです。

一般によく使われる1/2λダイポールアンテナや一波長ループアンテナや八木アンテナ(1/2λ)はエレメントが同調しており、エレメントには定在波が乗っています。しかしロンビックアンテナは進行波アンテナ(非同調アンテナ)であり、エレメント上には定在波はありません。定在波が無いということは電圧が特に高い部分が無いので、周囲の影響が比較的少ないということです。

一辺の長さを長くする程、またそれに応じて菱形の角度を狭くして細長くする程、指向性は鋭くなります。一辺の長さが波長に比べて短い場合は、角度を狭くしても意味がありません。

菱形を水平に張れば水平偏波に、垂直に張れば垂直偏波になります。今回の場合は水平偏波なので、水平に張りました。

VHFではHFに比べて波長が短くアンテナを小型にすることができるので、一般に八木アンテナが多く使われていますが、八木アンテナはあまり広帯域ではありませんし、広帯域にすると性能が悪<なります。ロンビックアンテナは元々非常に広帯域な為、テレビの受信用には最適です。また受信方向が決まっているのでこれも好都合です。ただ大きいのが欠点と言えるかもしれません。

もうひとつの特徴は、終端抵抗がある為、損失が発生することです。損失があるということは、利得が下がるということです。でも受信では、指向性が良ければ利得は増幅器(ブースター)でなんとかなります。

実用化したロンビックアンテナの平面図と立面図

ロンビックアンテナの図面 上の図が平面図で、下の図が立面図です。陸屋根の屋上のルーフタワー部を給電点にして、2mのビニルパイプのマストと屋根馬で電線(エレメント)の中央部を2箇所支持しています。地上からの高さは約7~10mです。給電は5C-FBの75Ω同軸ケーブルです。

給電部のバランはテレビ受信用の防水型混合器のプラスチックケースに入れています。終端抵抗は廃品のフィルムケースに入れています。終端抵抗は680Ω1/2Wです。

エレメントは普通の1.25mm2ビニルコードを裂いて一本にして使いました。材料費がほとんど要らないのは好都合です。

バラン(インピーダンス変換器)の回路図と作り方

バランの回路図 ロンビックアンテナの給電点インピーダンスは約600Ωといわれています。75Ωの5C-FB(5C-2V)等で給電するにはインピーダンス比1対9のインピーダンス変換器が必要です。

テレビ受信用の75Ω-300Ωの変換器を2組用意します。メガネコアと呼ばれるものです。これを図のように1組と半分を使って配線します。インピーダンス比1対9のバランができたら、上の平面図のように同軸ケーブルとアンテナの間に入れます。

これで75Ωと675Ωのインピーダンス変換と、平衡不平衡の変換(バラン、バルン、BALanced-UNbalanced、BALUN)をします。

インピーダンス比1:9バランの考え方

バランの配線は一見複雑そうですが、次のように考えると、よくわかります。

1:1バランを3個用意し、1次側を並列に、2次側を直列に配線します。これで電圧比1:3のステップアップトランスが出来上がります。つまりインピーダンス比1:9のバランのでき上がりとなります。

UHF/VHFロンビックアンテナを使用した結果

とにかく巨大なアンテナですが、いいかげんに作ってもうまく動作してくれます。私はこれを約20年間使用しています。安くて、長持ちして、性能が良いのが自慢です。テレビのアンテナに見えないのも特徴です。

利得 8素子八木に比べ  100MHz~200MHzで +3~-3dB
14素子八木に比べ 500MHz~600MHzで  -6dB
つまり利得は10素子八木と同等と思われます。
指向性 10素子程度の八木アンテナよりも指向性は鋭いようです。
ロンビックの角度θが30~40度では、200~600MHzでは指向性が割れて使い物にならない。
この角度を小さくしていくと、200MHz付近から改善される。θ=16.5度で600MHz付近まで問題ない。800MHz付近まで使うのならもっと角度を小さくした方が良いと思います。しかし、100MHz付近ではサイドローブが出るかもしれません。
帯域 100MHz~600MHz 性能をある程度犠牲にすれば50MHz~1000MHz
偏波面は水平に張れば水平偏波、垂直に張れば垂直偏波になります。
いたずらで680Ωの抵抗を0Ωにしてみました。受信に使うなら特に大きな変化は無いように見えました。かなりいいかげんでも、なんとかうまく動作するようです。